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ショートコラム Vol.121
「グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)」という名称には「裏の意味」がある、というエピソードが好きだ。
一般には、「グラウンデッド」とは「地に足のついた」という意味だ。これは、「定性分析は科学ではない」という昔ながらの批判へ、「データにもとづいた、しっかりとした理論構築ができる」という反論を込めている、ということになっている。
しかし、逸話によると、その裏で、そのデータを集めるために、地べたを這いずり、汗をたらし、小石のひとつひとつをめくるように情報をひろっていくことから、「グラウンデッド」というのだ――という。じっさい、切片が 1,000 枚を越えるような分析をすると、血を吐く気分になる。
先日、HCD-Net認定 人間中心設計専門家の、第7期の認定審査が終わった。合格者数は、人間中心設計専門家 51名、人間中心設計スペシャリスト 54名。これで、過去7年間での認定者は 600名ほどにもなる。
前回、今回と、スペシャリストの応募者は、ウェブ系の方が半数に近い。7年前、ウェブ業界に「人間中心設計」が、ほとんど知られていなかったことを思うと、感慨深い。
ウェブの広がりとともに、ユーザーとの関係を「地に足をつけて」考えなければならない企業が増えている、ということなのだろう。じっさい、ヤフーも、リクルートも、クックパッドにも、専門家がいる。制作会社でも、アイ・エム・ジェイやコンセントは、群を抜いて認定者を保有している。どの会社も、切実な真剣さだ。
人間中心設計は、地道な作業だ。しかし、その地道さのうえに、着実に良いものを築きあげる力がある。ウェブ業界での人間中心設計も、汗水たらすような、ときには地を這うような、たいへんなことは多いだろう。しかし、年々、その根は広がっている。今年の合格者にも、ぜひ活躍していただきたい、と願う。