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「人が変わらなければ」
もちろんそんなに頻繁にではないけれど、企業は職制の改革、組織の改編、事業所のネーミングの変更などを行うことがある。それが企業文化の変革につながり、さらにはHCDマインドの醸成につながるようであれば好ましいことなのだが、どうもなかなかそう簡単にはいかないようだ。幹部の焦りは理解できる。しかし肝心の担当部門の人たちのマインドセットが、そうした変革によってどこまで変われるかには疑問がある。
僕はこれまでに随分そうした変革を見てきた。身近にも経験してきた。しかしトップの視点ではなく、現場の視点で見ると、「ああ、あの人はそういった部門に移ったのね」「あの人の職位はこうなったのね」というだけのことが多かったように思う。そして、その人の人柄や考え方はどっこい、そう簡単には変わらない。
革命であれば、考え方が適しないと判断された人間は粛正される。要するに物理的に消えてなくなるわけだ。これを短絡的に企業にあてはめて、やれ左遷だ、退職勧奨だ、としてしまうのは危険なことがあるだろう。しかし、人間性や価値観というものがそうは簡単に変わらない以上、時に強権発動をした方がいいと思えることもある。
実際にそうした例を身近で見たこともある。当時のトップは、考え方が適しないと思われた人たちを左遷部屋に詰め込んで、彼らから権限を剥奪したのだ。これは内部的には激震を走らせたが、残された人たちは次第に新しい環境に順応したように見えた。そう、そのように見えたのだ。しかし、残された人たちにも古い考え方は残っていて、しばしばそれが復活した。結局、そうした古い考え方が排除されるには、かなりの時間と新人の登用が必要だった。
マインドセットの切り替えというものは、それほどに困難なことだ。しかも全社的に切り替えを行うとなると、一時的にせよ、それは大混乱を招いてしまう。大企業でそれをやった例としてはゴーンの日産改革などがあるが、どの程度の効果があったといえるのだろう。判断の難しいところだ。
しかし、それが困難であるということになると、HCDというマインドセットを社内に浸透させましょう、という挑戦は果てしなく困難な事業であるように思えてしまう。結局、世代交代を待つしかないのかもしれない。その意味で、HCDによる改革は根気よく進めなければならないのかもしれない。