更新日:
○○先生へのレスを兼ねて書きます。
ユーザ工学は文系、もしくは人間科学から出発した工学です。そのあたりが他の「工学」とは違ったところだと言っていいでしょう。文理融合とか文工連携という目標を掲げた大規模プロジェクト「やおよろず」を経験し、また、その他の形・場でいわゆる工学系の皆さんとご一緒することが多く、さらには日立にいたころに10年以上工学系の世界に浸った結果、工学系の皆さんが人間科学に期待していることの曖昧さに多少不満を感じてきました。つまりsomething new、いいかえれば「ないものねだり」をしているように思われたからです。何かタネはないの??何か新しい切り口はないの??と「期待」はされているのですが、「なけりゃないでいいよ、僕らは僕らなりにやるから、じゃあね」というようなスタンスが見え隠れしていました。いや、これは悪口ではありません。工学系の皆さんは「つくる」技術と志向性をもっています。それはとても明解なものです。そのスタンスによって、工学系の皆さんはどんどんと世の中を作っていく。ただ、人間科学からの「積極的」なアプローチが少ないために、独自の、わるくいえば自分勝手な方向にどんどん突っ走ってしまう。
こうした点で人間科学に見られる「受け身的」な姿勢が気にはなっていました。世の中をつくるのは工学だけではありません。政治も経済もそうです。その意味では世の中を造り、動かしていくすべてのことに対してもっと積極的で挑戦的な姿勢、自分からもっと関わりをもっていく姿勢を人間科学はもつべきだと思っていました。研究室での実験的研究を否定するつもりはありません。ただ、それだけで終わるのは「嫌だ」。そんな気持ちがあったのです。そうした気持ちが人間科学から出発したユーザ工学の擁立に、また同じ気持ちをもっている人間工学やユーザビリティの専門家の皆さんたちとの連携につながったのだと思っています。
ユーザ工学は人間工学と同じように、できるだけ概念を明確に定義し、そのためのアクティビティを操作的に規定しようとしています。それは人間科学から見ると、時に「かなり無理があるよ」というものだと思います。ただ、そうでもしないことには、いいかえれば0次近似であっても、something is better than nothingということだと考えています。いや、時にsomethingを出すことが、出さないことよりも事態を悪くすることがあるかもしれません。ただ、そうしたリスクを冒してでも何かをしなければ、という切迫した思いがユーザ工学や人間工学の人たちを動かしてきたのだと思います。
ユーザ工学の手法についてはこれから後でご紹介しますが、人間理解という点からすれば、またそれを真摯に考えている皆さんからすれば、ずいぶん中途半端なものじゃないか、と思われるかも知れません。そんなことで人間についての情報を伝えているつもりになってもらっては困る、そう言われるかもしれません。ただ、バカを承知でそうした取り組みをしている、そんな人たちが少しだけどいる。そういう状況をお伝えできれば、という気持ちがあって今回、この入門シリーズを書いております。
あらためて。ユーザ工学は「工学」を志向しています。人間科学をベースにしていますが、方向性は工学です。具体的な実践のためのものです。そのために舌足らずかもしれませんが、何とかして目標を明確にし、その目標を実現するための指標を整理し、その指標を明示するための方法論を用意しようとしています。できうるかぎり、わかっているかぎり、概念を操作的に明確にするような努力をしております。なかなか難しい、いや、とても難しい課題です。だけど、そういうことをする連中がいて、それなりに少しは人々の生活に貢献することができれば、という気持ちでいます。
というわけですが・・まだ○○先生に対するお答えにはなっていませんでした。すみません。医学と工学は違うからですm(_._)m。医学の場合には「考え方」がとても大切だと思うし、そのための人間科学への接近はとても意義のあることではないかと思っています。えー、とても短いレスですが、ここが○○先生に限定したレスです(^o^)。
では
(X-1・おわり)