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昨年の12月から秋葉原にオフィスを借りた。日本のIoTやロボットのスタートアップが集まるある意味聖地のような場所だ。どこの大学の工房にも負けないような3Dプリンタやレーザーカッターなどの設備が揃い、日夜スタートアップの若者達が制作に励んでいる。またスーツを着た企業からの見学者や海外からのお客様も引きも切らない。オフィスはそんな場所の一角にある。
人間は年をとると過去の成功体験から逃げられなくなるものだ。それを避けるためには、新しい人に会い、新しい場所に行くことが自分をアップデートするためには重要だと思っている。
そのオフィスにいるようになって、徐々に分かってきたことがある。今までのPCとスマホによるインターネットビジネスの終焉である。これからは、リアルとデジタルがシームレスに操作という行為を挟まず繋がって行く時代が来る、いや来ているのだ。
例えばIoT化した洗濯機で洗濯をすれば、シャツに付着した汗や皮脂から健康状態を収集して、ヘルスケアプラットフォームに送り、他の機器から収集されたデータと統合して、人工知能がその人の体調管理をすることも可能になってきた。
これからは、その操作感無くデータを集める機器(プロダクト)が大量に創られて行くことになる。利用者は、そのプロダクトがデータを集めていることすら分からない場合もある。今まではジョギングに出る時にはスマホのアプリを起動していた人も、IoT化されたシューズを履けばなんの操作もせずにありとあらゆるデータを得ることが出来る。そのデータを確認するためにPCやスマホはいらず、リビングルームのテレビに声をかければ大画面に映し出してくれるのだ。
インタフェースの進化は人間の成長の逆と言われている。人間の大人は文章が書ける、だが命令文入力はUIとしては一番下等だ。次に子どもは文章が書けないが絵が描ける、UIでいえばGUIである。そして最も進んだUIは形の無い情報に触ったり音や振動などで操作するタンジブルインタフェースである、ばたばたしたり泣き叫ぶ赤ん坊と同じだ。
IoTの時代は正に最もユーザーに優しいインタフェースの時代が来たということになる。その時にHCDの専門家は何を目指すのであろうか。その答えの一つは、人はプロダクトを操作するのではなく、一人一人のコンテキストに沿った行動をするということである。HCD専門家の役割は操作の評価から質的調査に比重が移っていくに違いないのだろう。