HCDコラム

3年程前にトイプードルを飼うようになってから,我が家の旅行には愛犬同伴が多くなった.犬を連れての旅行は色々と面倒なことがあるが,一番の面倒なことは旅先で犬を連れて入れるレストランやカフェを見つけることである.犬を連れて入れるお店はドックカフェ(店内への犬の同伴が可能で犬用の食事も提供しているカフェ)とペット入店可の一般的なカフェ(店内かテラスへの犬の同伴が可能だが犬用の食事は提供されないカフェ)に大別される.旅先のお店については不案内であるから,食べログやぐるなびといったレストラン検索サイトを通じてお店の候補を選び,お店のサイトを閲覧した上でお店を選んで利用することが多い.

ところが同じようにお店を選んでも,私の場合,ドックカフェと一般的なカフェではお店を利用した後の満足度が同じにはならない.ドッグカフェでは,犬のための水が提供されたり,店員が犬と楽しそうにコミュニケーションを取ったりしても予想通りであり,そのことは高評価につながらない.ところが一般的なカフェでは,同じようなサービスが得られると非常に高評価になる.またドックカフェでこのようなサービスが得られないと裏切られた気分になり途端に評価は低くなる一方,一般的なカフェでは止むを得ないと思い,そのことは然程評価に影響しない.結果的に私の場合は同じサービスを体験してもドックカフェに対する満足度は一般的なカフェよりも概して低くなることが多い.これは,私がお店のサイトの情報などを基に,ドックカフェに一般的なカフェには持たない過大な予期的UXを持ってしまったためであると思われる.

サービスに対する素晴らしい予期的UXは,お客のサービス享受の動機付けを高めるので,お客へのサービス提供の機会創出という観点から望ましいが,その予期的UXが私のドックカフェの例のような過大な予期的UXならば,その予期的UXを持たない場合よりも却ってお客の満足度を下げてしまうことに繋がってしまいかねず望ましくない.お客のサービス享受の動機付けを高め,かつ過大な予期的UXを生み出さないように,提供するサービスの「予期的UXをデザインする」ことも必要ではないだろうか?


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。