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この秋、92歳の父が永眠した。最期を看取る経験を通して再認識したことを整理してみる。
HCD/UXDを推進する際、最初に「誰のために」提供すべきかを考える。利用者の設定は難しく、関与する当事者が多くなるほど、誰を中心に想定するべきか迷う。
終末期医療(※1)におけるHCD/UXDの場合はどうであろうか。介護保険を活用すれば相応のサービスを受けることができるが、訪問医療「医師、看護士」、介護企業「ケアマネージャ、介護者(平日担当、祝日担当)、リハビリ担当、入浴担当・・・」と多様で多数の支援者が現れる。支援者の誰もが最良の介護活動を務めようと取り組むが、確かに関係者の意思が常に一致するわけではない。例えば、介護行為に伴う苦痛に対し、当人は嫌がり、家族は困惑し、介護者は役務に集中せざるを得ない。結果として関係者全員の満足度を高めるのは難しいケースと言える。
私達の活動が、人と機器の接点に限定して考察する活動から、サービス、ソーシャルへと対象が広がる中、医療事故、交通事故、セキュリティ事故、食品事故、などに繋がるような重大な問題に向き合う際は、関係するそれぞれの専門領域と連携しながら乗り越える必要がある。例えば、自然災害時の対策本部や避難者と支援者をつなぐボランティアセンターの存在は、橋渡し役としての役割が高く、台風、地震など繰り返される災害の問題に対して先人が培ってきた知恵の結集と認識している。
私達はHCD/UXDを学び、時に失敗しながら専門家としての役割を果たそうとしているが、果たせる役割は、その専門性が発揮できる限定された部分に留まる。他の専門領域の判断を伴う場合には、各専門性を有する人達が、互いの領域をオーバーラップさせて連携の糸口を見つけることが求められるだろう。
こうした連携の意義について理解を深め、連携活動を的確に実践できるようになりたい。他の領域の専門性を把握するには時間が掛かるが、専門性を極めようとするマインドに触れ理解し合うことはできるだろう。私達が真の目的を果たせるよう、連携するマインドを育みたい。マインドとノウハウのバランスの取れた連携が自然に成立するよう、父の穏やかな表情を心に留め、これからの連携活動に精を出したい。
「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~」
公益社団法人 全日本病院協会 平成28年11月
https://www.ajha.or.jp/