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ウェブサイトのUXデザインにおいて信頼感は重要な要素の一つである。悪意あるサイトが世に蔓延する昨今、利用者はわずかな不信を感じただけでそのサイトを開こうとしなくなる。また、サイトへの不信感はそれを運営する企業団体のブランドイメージにも悪影響を及ぼす。
だが、信頼感は利用文脈に左右される。定石的な対策だけでは不充分なのである。
以下に事例を紹介する。全て「行政という立場上特にすべきでない行いをしたせいで信頼感を損ねた事例」である。執筆後に指摘箇所が是正されていたらご容赦願いたい。
例1:国民保護ポータルサイト
http://www.kokuminhogo.go.jp/
国民保護ポータルサイトは、外国からミサイル攻撃を受けた際の避難方法等の情報を国民に提供するサイトである。このサイトでは免責として「国は、利用者がコンテンツを用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではありません」と掲げている。この文を真に受けると「国の指示通りに避難して国民が死んでも国は責任を取らない」ことになる。
例2:個人情報保護委員会ウェブサイト
https://www.ppc.go.jp/
個人情報保護委員会ウェブサイトには「ご意見ご感想」という題のアンケートフォームがあり、氏名や電話番号を記入する任意記入欄がある。しかしこのフォームで収集される個人情報の利用目的はどこにも書かれていない。個人情報保護委員会は個人情報保護法に違反している。
例3:内閣府ウェブサイト
http://www.cao.go.jp/
内閣府の所轄する政策の中に「マイナンバー制度」がある。内閣府では同制度の円滑な運用のため「マイナンバー総合フリーダイヤル」というサービスを提供している。一方、内閣府は「共生社会政策」も所轄しており、障害者差別解消法に基づいてアクセス困難なサービスの是正に取り組んでいる。そして「マイナンバー総合フリーダイヤル」には電話以外の身障者向け代替手段がない。内閣府は障害者差別解消法に違反している。
以上、3つの事例を紹介した。
このような失態は、HCDを導入し利用者の協力を得て開発を進めることで回避できる。特に、他のサービスに乗り換えることのできない行政サービスにこそ、HCDの導入を切望するものである。