HCDコラム

皆さんが初めてユーザビリティやUXに出会ったのはいつでしょうか。私の場合は、学生時代のゲームサークルでの体験が初めてのテスト参加でした(コンピュータゲームではありません)。就職後に人間中心設計を知ってから、当時の体験が一種のユーザビリティテストだったと気付きました。

ある秋の日、先輩がテスト参加者を募っていたので、気軽な気持ちで協力しました。先輩の進行に従って、数名の参加者がゲームを遊びました。テスト終了後に気の利いた感想や意見を言えなかった、とそのときは思いましたが。実は、先輩は進行役と同時に行動観察を行っていたのです。参加者の表情や発言をメモに取り、その後の改善に活かしたようです。参加者が行動宣言してゲームを進めていくので、自然に思考発話が促されていました。

それから時を経て、ボードゲームの説明・進行役の経験がユーザビリティテストの進行役に活かせると感じています。ボードゲーム進行役の経験から学んだことを挙げてみます。
・アイスブレイク
・わかりやすく説明すること
・準備シナリオ通りに進行しながら、想定外の状況には臨機応変に対応
・ファシリテーション

一方で、プレイヤーとして『カタンの開拓』『アクワイア』などのボードゲームに参加したときには、楽しむため勝つためにいろいろ考えます。経験を重ねることで、大局観、洞察力、交渉術、リソース管理などの技術も向上します。これらは遊びの中で学んだ能力ですが、仕事に応用できる場面もあると考えます。

逆に、こんな経験もありました。知人から、イベントでの『人狼ゲーム』司会進行役を依頼されました。依頼人以外の参加者と初対面のため、開始直前まで不安を感じ緊張していました。そこで、ユーザビリティテストでは初対面の参加者に応対する場合が多いことを思い出すと、落ち着いて運営できました。準備シナリオ通りに進めつつ、状況に応じてアドリブを入れて適切に対応する点でも似ています。参加者のUXを考えるという点でも類似点があると思います。

しかしながら、ボードゲーム好きの知人で他に人間中心設計に携わっている人を寡聞にして存じません。私の仮説が特殊なのかどうかわかりません。遊びで学んだ能力と仕事に必要な能力とに共通性があるという考えは普遍的なのでしょうか、それとも特殊なのでしょうか。皆様の御意見をお聞きしたいところです。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。