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HCD-NetではHCDやUXデザインに関する多くの教育セミナー、プログラム等が提供されている。その多くが実務家に対する教育であるが、大学教育においても注目されており、重要である。私の所属する芝浦工業大学デザイン工学部は、2017年度からの学部再編に伴い、今年の4月からUXデザイン演習がスタートしたので、その様子を紹介する。今後、継続した授業改善を実施していくので、ご意見や感想などをいただけると幸いである。
デザイン工学部デザイン工学科は2つの系にわかれている。「生産・プロダクトデザイン系」と「ロボティクス・情報デザイン系」であり、私は後者に所属している。再編前は、プロダクトデザイン領域所属の教員だったので、所属が異動したようにもみえるが、再編前はプロダクトデザイン領域において情報デザインの内容もカバーしていたので、研究室活動としての変更はない。この再編でUI/UXデザイナーとして活躍することを想定したカリキュラム(履修モデル)を新設し、今年がその2年目となる。UXデザイン演習は2年生前期に開講されるので、今年が初年度の開講である。
授業は、月曜日の4~5限(100分×2コマ)で全14週。スタッフは非常勤にて2名の先生にお越しいただいており、教員は3名で対応、そして院生3名にTAとしてサポートしてもらっている。社会人の多くは問題意識をもってセミナーに参加されるが、大学生の場合、多くが受け身での受講であることから、前半は毎回テーマを明確に明示して臨んだ。前半7回はグループワーク(5~6名)とし、初回はKA法をベースに「体験価値に気づくこと」、第2回はインタビューと上位下位関係分析を通して「体験価値の違いを知ること」、第3回はペルソナ法、9コマシナリオで「価値を描くこと」、第4回はジャーニーマップを使って「時間軸とコンテクストの重要性を知ること」、第5回は「プロトタイピングと評価をやってみること」等であった。テーマは身近なものとし、一貫して「昼食時間のよりよい体験」として進めた。そして第7回に発表会を実施、発表はA3サイズ4枚のパネルとモックアップの提示を必須とし、全グループが発表した。完成度はいろいろだったが、留学生が嬉しい学食のシステムや、昼食のピーク時間帯をシフトさせる仕組み、また新しい3階建カフェテリアの提案や新予約システム、新デリバリーサービスなど、多岐にわたった提案だった。ペルソナを用いることで、多くの人に満足してもらえるデザイン提案となることが少しは理解できたのではないかと思う。後半は「移動についてのよい体験」をテーマに、履修者全員が個々にデザイン提案を進めている。前半7回の手法やプロセスを参考にできると考えたが、やはり苦戦している学生もいる。少し前の水本理事のコラムにて教育の2つのタイプの紹介があったが、本演習は前半が「階段型」、後半が「登山型」といえそうである。7月末の全員の成果をみて来年の構成を再度検討したい。
今回のカリキュラムの特徴のひとつは、同じ前期に講義「UXデザイン」を開講している点である。事前作成したシラバスを参考にしつつ、結局、演習と密に連携した講義を実施している。これによって演習では説明できなかった背景を説明できたり、学生自身がやっていることの振り返りができ、とても有意義と感じている。もっとうまく連携できそうにも思うが、1年目なので今後の課題としたい。本来、4年間のカリキュラムを紹介した上で、UXデザイン演習の位置づけや内容を説明すべきところであるが、紙面の関係で今回はご容赦いただきたい。機会があれば社会で実践されている皆さまとも一緒に議論できればと思っている。なお、本演習の様子はFacebookのページに写真とともに一部紹介しているので、演習風景などはどうぞそちらをご参照ください。
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