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私は自称ユーザビリティエンジニアで、そのしごとは、ユーザーとエンジニアの間の翻訳家だなと思っていました。
私は初期は、業務目的で利用するコンピューターの世界で発達したユーザビリティの考え方や手法を、娯楽目的で利用するAV機器の世界に適用するにはどう変換するか、ということをやっていました。1990年代、ビデオの録画予約・テレビのOSD(On Screen Display)・オーディオ機器のタイマーなど、マイコンの発達により「より楽しむためのややこしい機能」が盛りだくさんになってきていました。画面とキーボード&マウスという環境でのテスト方法の事例を見ながら、操作デバイスも多様で利用時の姿勢も多様な機器で意味のあるテストをするにはどうしたらいいかを考えるのです。特にテレビのリモコンの使いやすさについては、利用目的が「業務」ではないので、「タスク」の設定が難しかったです。書籍を読んだり、研究会で他社事例を聞いたりしながらAV機器の状況に適した実施方法を工夫という応用のための「翻訳」し、さらにそれを開発現場の人に伝わる言葉に「翻訳」していました。
近頃は、HCD活動がらみで、営業とデザイナーの間やデザイナーとエンジニアの間、さらに管理者と担当者の間の共通語探しをやっています。これらは「翻訳=ある言語を他の言語で記述する」というより「言い換え=同じ事柄を別の言葉で言い表す」といったほうが相応しいかなと思います。そう、かつての週刊こどもニュースみたいに…。HCDは、つまるところ、人とその周辺をみて、適切な仕様を考えて試し、実現して人に届けることだと考えています。そのようなことはHCDと言われる前からやられてきたことです。「お客様第一」「三方良し」など、やろうとしていることは同じだと思います。そういう中で、誰をみるか・どのようにみるか・何を適切と考えるのか、など、先人の知恵が「手法」となって整備されてきた結果が『HCD』の考え方・やり方だと思っています。本来は企業活動そのものだと思うのですが、「HCDの言葉」を使うと特別な違う活動として難しくとらえられてしまいがちです。昨年、社内向けの展示会でHCD活動をHCDと言わず「ダブルダイヤモンド」で説明したところ、経営幹部からかつてない反響と理解が得られる、ということがありました。昨今、話題に上がっているクリステンセンの「ジョブ理論」も使えそうです。
ということで、「言い換え」の種を常に探しています。HCD-Netでは、研究発表会・メトリックス談話会・HCD広めたい人Meetupなど、交流の機会を設けています。「言ってみた」「やってみた」的な事例もどんどん出していただけるとありがたいです。