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こんにちは、コンセントというデザインエージェンシーで、サービスデザイナーとして活動している赤羽です。
さて、本日コラムのテーマは、タイトルのとおり「共創」です。みなさん、普段「共創」ってどんなことを指して使ってますか?
現在わたしは個人的なクラウドファンディング活動として皆さんのご支援で「Designing for Service」という、サービスデザインの近年の研究論文を集めた本の翻訳活動に取り組んでいます。この本のテーマは、ざっくりいうと「サービスデザインを再定義する」です。そして、この書籍はサービスデザインの本なので当然、「共創」に類する言葉がとてもたくさん出てきます((「This is Service Design Thinking」のサービスデザイン原則の中にも「共創」があります)。たとえばCo-design、Co-production、Co-creation,Co-creation of Value…と、さまざまな文脈でCo-(ともに)という単語が出てきます。これをどう翻訳したものか…というのが、本書における大きな1つの悩みどころになっています。
と言いますのも、Co-design、という単語1つとっても、「共働デザイン」「共同デザイン」「協働デザイン」「コ-デザイン」「共創デザイン」など色々訳が考えられます。実際、書籍やブログでの言及でも様々な翻訳の仕方がされてますし、Co-designという言葉とCo-production,Co-creationなどがちゃんと区別されている場合もあれば、区別がはっきりしないものもあります。これは海外ではどう解釈されているのだろう、と様々なデザイナーのブログなどをレビューしてみたところ「Co-designは共同でデザイン(設計)することだから上流工程、Co-productionは一緒に手を動かしてつくることで下流工程、Co-Creationはこれを全体まとめたもの」という説明もあれば「大体おなじ」という説もあります。さらにサービス・マーケティングの概念である「サービス・ドミナント・ロジック(Steven Vergo, Robert Lusch)」やGrönroosの「サービス・ロジック」ではCo-creation of Value (価値共創)という言葉があり、この価値共創を指しているのか、それとも参加型デザイン(Participatry Design)の結果やプロセスとしてのCo-creationを指しているのか、文脈ごとに読み取る必要があるわけです。
まあ翻訳の難しさはともかくとして、翻って日本でもどうかと考えた時、「共創」という言葉はとても便利な概念です。ゆえに、けっこう大雑把に扱われているな、とも思います。ワークショップで検討することを指して「共創」とも言いますし、顧客からアイデアを募集するような製品開発も「共創」と言ったりします。それでなにか大きな問題があるという訳ではありませんが、ただ、デザインプロジェクトにおいて「共創」を取り入れる場合には、しっかりその言葉の指す意味を自覚していないと「なんとなく共創」になってしまい「なんでやったんだっけ」「本当に共創になっていたのか?」とワークの結果が迷子になったりします。「人とともに」価値や体験を生み出す「共創」は「人間中心」のHCDにとっても重要な概念ですので、しっかり自覚的に意味を定義しながらプロセスを設計していきたいと思います。