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もうすでに語り尽くされている感もありますが、中国のIT化は目を見張るものがあり、SNSや専門メディアだけでなくお茶の間のニュースでも話題に登るようになりました。テンセントやアリババといった巨大Eコマースやモバイルペイメント、最新のHMIを積んだ電気自動車など、あらゆる分野において、デジタライゼーションが進んでいます。
プロダクトやITサービスだけではなく、社会における個人の信用度をスコア化した信用スコアの普及や、監視カメラにおける顔認識技術で個人を特定する、というところまでいくと個人的な感覚と照らし合わせるとやや行き過ぎなのでは?という気持ちになってきます。5万人が集まったコンサート会場で経済犯罪で指名手配中だった男性が逮捕される、ビール祭りの入り口に設置されたカメラが25人の指名手配者を見つけて逮捕、といったニュースを聞くと、IT社会の行き過ぎによる超監視社会の到来か!?という気持ちになると共に、ジョージオーウェルの名著「1984」の中で、自室に設置された監視カメラの陰に隠れて主人公のウィストン・スミスが「勝利ジン」なる不味い蒸留酒を隠れて飲むシーンを思い出します。
そんな感じで一方的に悪者として見がちな監視社会的システムですが、信用スコアができたおかげで、今までマンションを借りるのが難しかった人がマンションを借りられるようになった、みたいな話も聞くので、あながち悪い面ばかりでもないのかもしれません。信用スコアを利用したサービスも続々と生まれていると聞きます。これは日本のように公共サービスのレベルが高く、便利な社会に住んでいるとわからない感覚です。偽札が横行し個人の信用度が低い中国だからこそモバイル決済が急速に普及したことも、日本で生活しているだけでは、なかなか想像するのが難しいかもしれません。中国に限らず、タクシーのサービスレベルが低いアメリカからUberやLyftのようなライドシェアサービスが生まれてきたのも、偶然ではないでしょう。日本のようなタクシーのサービスレベルが高い国からはなかなか出てこないと思います。
日本に住んでいる私たちからするとある種不便な社会におけるPainやNeedsをきっかけに、新たなサービスが生まれ、便利な社会にも広がっていく状況は、HCDにとっても示唆に富んでいます。Comfortableな環境にいる普通の人にインタビューや観察を行うよりも、日常生活の中で自然と身についているフレームを外して異なる環境で暮らす人をターゲットにした方が、新しいヒントが得られることもあるといえるでしょう。やや無理やりまとめに入りますが、まったく新しい発想が求められているときは、調査や分析の対象を、ターゲットユーザーから少し外れたエクストリームな人や場所/状況にスコープを定めてHCDを実践してみるのもいいのではないでしょうか。