HCDコラム

映画やお芝居を観るのが好きです。夢中になって観ている最中でも、ついついインタフェースのことを考えてしまう癖は、皆さんにもお心当たりがあるのではないでしょうか?

最近観た作品では、子どもが曲がった木の枝と松ぼっくりを短機関銃と手榴弾に見立て、戦争ごっこをしていた場面に気を引かれました。短機関銃は構えて引き金を引きやすい、つまり狙撃がしやすい形状。手榴弾は安全装置が抜きやすく遠くに放りやすい形状。そこだけを切り取ると、武器は人間工学に基づいた形状なのだなぁと思わされます。HCDに適ったプロダクトだと言ってもいいのかもしれません。

(武器という道具の存在を考えると、人間中心という言葉は皮肉なものですね。人間中心の意味を深く考えさせられる話ですが、それは今回とは別のお話なので、またの機会に…)

脱線から話を戻しますと、子どもの遊びだけでなく、様々な場面で見立ては現れます。ジェスチャー、パントマイム、お芝居。道具のどのような機能を用いるために人間がどのような動作をするのか、手に取るようにわかります。観れば観るほどおもしろいものです。

武器の見立ても、武器が原始的であればあるほど理解が容易になります。しかし、ミサイルという部類になってくると、道具より概念に近くなってくる気がします。ミサイルを表現するためのユーザーインタフェースはボタンというシンボルひとつになりますし、もしかしたら今後はボタンさえ不要になるのかもしれません。

もっと日常的なところに目を向けると、スマホなどのガジェットがあります。スマホやPCを使うジェスチャーはどんなアプリを使っていてもほぼ同じです。たとえばタクシーを呼び止めるために手を上げるという旧来のジェスチャーは、迎車するためにスマホを操作するジェスチャーに取って代わられるかもしれません。

インタフェースの変化は、道具や概念の見立てに確実な変化を及ぼすものと考えます。これからの遊びやお芝居におけるユーザインタフェース/ユーザアクションの見立ては、いったいどうなっていくのでしょう。そうした変化を悲観しているわけではありませんが、大変に興味があるところです。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。