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昨年引っ越しを考えていた時期があり、ほぼ日課のように不動産サイトを眺めていました。
最近の不動産サイトは優れたUXを実現しているものが多く、個人的にとても勉強になります。
ところが、あるサイトに行ったときのことです。アクセスすると、「何かお探しですか?」と、チャットボットのお問い合わせ欄が下からニョキっと出てきました。これが非常に邪魔で、肝心のコンテンツが隠れてしまっています。
私は最小化ボタンを押して小さくしました。が、別ページに遷移すると、また下からニョキっと出てくるではありませんか。最小化ボタンを押して小さくして、またページ遷移してニョキ、の繰り返しです。私は昔よくお目にかかった某ビジネスソフトのイルカを思い出しました。あまりに最小化に忙殺されるので、お問い合わせ欄に投げやりな感じで「邪魔です」「消えてください」と入力しました。
すると、そこから事態が急変します。
お問い合わせ欄に以下の文字が。
「―――― オペレーターが入室しました ――――」
私はそれを見て、自分の背筋が伸びるのを感じました。もはや邪魔だなんて返せません。オペレーターの方と少しやりとりし、「お問い合わせ欄を消すことができず申し訳ございません。」と丁寧に説明いただきましたが、こちらもそんなことで煩わせて申し訳ない気持ちになりました。
ここで着目したいのが、この「背筋を伸ばした瞬間」です。UIの向こう側に、それまで感じていなかったオペレーターの存在を感じたからこそ、私の意識も変わりました。無機質に見えていたものが、人間味を持って感じられたわけです。このように「対象に "人" を感じる」ということは大事だと思います。UIに対する関係性がより緊密・対等になりますし、そこから提供者側の想いやこだわりを身近に感じることができるからです。
昨年のトレンドのひとつにAIがありました。AIと人間とのインターフェースとなる音声UIやチャットボットも広がりを見せています。ただ、たとえボットであっても、AIだったとしても、その裏に人の息遣いが聞こえる、魂を感じるものが、これからの世の中で生き残っていくのではないでしょうか。
私たちは日頃からHCDの実践者としてユーザーを身近に感じようとしているわけですが、その逆、ユーザーが私たち提供者やその想いを身近に感じてもらうということも、実は大切な要素なのではと思います。
(ちなみに上記のサイトは、今は最小化状態が保たれるよう修正済みのようです。)