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カリフォルニア州サンディエゴでUX関連のリサーチ・デザインを日々行っています。アメリカではUXに携わる人たち(主にUX Researcher・UX Designer・UX Strategist)をUXersと呼びます。UXerにはユーザーと作り手をつなぐことが期待されているのは日米問わず同じですが、グローバルなモノ作りでは「ユーザーは外国人」「作り手は日本国内のエンジニアやデザイナー」というケースが多いため、より一層フィルターとしての役割は重要になります。
先日とある大手日系企業が、海外でモバイルアプリをリリースするお手伝いをさせて頂きました。クライアントの説明によると、プロジェクトは社長の肝入り。複数のデザインプロトが用意され、ご依頼頂く前に、西海岸でお披露目も兼ねて現地ユーザーの方たちに見てもらったそうです。しかし、残念ながら現地の評価はあまり芳しいものではなく私の所に話が来ました。現地ユーザーに「This is not cool」と言われたのが相当ショックだったようです。
皆さんもよくご存じの通り、ユーザーは自分の感覚や欲しているエクスペリエンスを上手く表現することができません。「This is not cool」の「Cool」が本当は何を意図しているのかを正しく解釈・理解できなければ、次回同じ失敗を繰り返す可能性があります。
打てる施策は幾つかありますが、今後別のアプリのリリースの計画もあるとのことでしたので、なるべく早い段階で一度デザイン部門のショック療法を行った方が良いと判断しました。約1か月後SD法と因子分析などを用いた少し大掛かりなユーザー評価を行いました。20~50代まで合計50名、外部の被験者を招き、他社のUIも含めた6つのUIについて、25個の形容詞をそれぞれ±3点の7点法で評価してもらいました。
デザイン評価を可視化したことで、アメリカ人ユーザーからの評価を落としていた部分が確認でき、改善点が明確になりました。今回のデザイン担当者も「Cool」じゃなかった部分が具体的に分かったことで、納得して変更に向かうことができたようでした。主観的な領域なので言葉の壁やセンスの違いで済ましがちですが、海外ユーザーを正しく理解し、「日本の作り手と海外ユーザーの感覚のズレ」を把握することの重要性を改めて感じたプロジェクトでした。