HCDコラム

今年のゴールデンウィークは5/1即位の日が入ったことで、10連休の企業が多いそうです。しかし、私が通院している大学病院は、4/30、5/2は通常の外来診療となっています(ありがたいことです)。
そんな大学病院での体験と気づきを話題にしてみます。

大学病院にはいつも多くの患者がやってきます。電子カルテに医療サービスが入力されると瞬時に点数が加えられていきます。すべての診療が終わって計算係に保険証や書類を渡すと、その場で「●●円です」と教えてもらえ、ATMで支払う流れは、紙のカルテの時代では考えられなかったものです。

会計ATMは、現金とカードどちらも使える標準機10数台と、クレカやデビットカードだけのカード専用機1台があります。カード専用機は一番奥に設置されており、立て札で「カード専用」と掲示されています。カードを持たない人が間違えて行かないようにする配慮ですが、奥まっていることも相まって、ある種の「結界」を作り出しています。

はたして、カード専用機はいつもあいているのです。おかげで私は待たずにカードで会計できるのですが、ふと見ると、標準機でもカードで支払っている人が多くいるようです。カードで払うのに、カード専用機は空いているのに、なぜ標準機に行列するのか。標準機は最初に「カード?現金?」と聞くUIがあり、手番が多いのに。

カード専用機が使われない理由として、仮説を2つ考えました。1つは、前述の「結界」です。奥まった場所にぽつんと1台だけ、立て札の向こうにある機械の周囲は、なぜか薄暗くすら感じられるのです。病院に来ている弱った人々が、いかがわしいものを本能的に避けても不思議はないでしょう。仮説のもう1つは「一台だけ」であること。目立ちたくない人々が選ばない最たるものです。

カード専用機は何年経っても1台のまま、増えません。利用者がカード専用機を避けているのだから、数字だけ見れば、増やさないのは当然です。

しかし人間中心設計的に観察すれば、カード専用機が使われない理由を仮説立てて、カード払いの人が専用機を使うよう施策し、操作時間(行列の長さ)の削減、ランニングコストの効率化を検討できるのではないでしょうか。おそらく、カード専用機を3台にするだけで、回り始めると思っています。

そんなことを考えつつ、デジタルトランスフォーメーション!データ活用!の波の中で日々仕事をしています。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

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