HCDコラム

会社内やチーム内にHCDの考え方を浸透させる悩みや苦労をよく聞くが、ご多分に漏れず私も自社に浸透させるために試行錯誤している。その中での学びをいくつか紹介したい。

①手法ブームに気をつけろ!
「妄想ペルソナ」「俺的ジャーニーマップ」など安藤先生もびっくりのトンデモ手法が社内にまん延してしまったことがある。全社をあげてユーザー中心でサービスを作ろう!となった時期に手法だけが変に広まってしまったのだ。無論、思い込みで作ったサービスは成功するはずもなく「ペルソナもジャーニーも作ったのにHCD、UXダメじゃん」という風評被害が発生。社内で実施する際は知識のある人間が見張る仕組みが必要だ。

②UX決裁(レビュー)でチェック!
見張る仕組みとして作ったのがこの工程。元々レビューが最初のビジネス的観点とリリース前の技術的観点の2回程度しかなかったため、最初のプロジェクト承認時点でビジネスゴールだけでなくユーザーゴールの確認も追加。次のレビューでペルソナ、サービスコンセプト、ユーザーシナリオを確認するUX決裁を実施。3回目でビジネスモデルや4P、ユーザーストーリーなどサービスデザイン全体を確認。4回目にユーザーテストの結果を踏まえたUIの確認とした。ステークホルダー全員で細切れにチェックしていくことで、JCD(自分中心設計)やリリース前に偉い人からちゃぶ台返しを食らう、という惨劇が減った。ただし、この仕組みをサボらず実施するには、仕組みを運営する部隊が必要である。

③UXの番人を用意せよ!
番人は上記の①②を遂行するだけでなく、サービスが巨大化し部分的にプロジェクト化されていくようになった時に重要であった。サービスの一部分の体験はしっかり作られていても、全体の体験を見たときにちぐはぐになっていたり、違う体験でもインタラクションとしての機能が同じで、同サービス内に似た機能が複数存在する、ということが発生してしまう。UXの番人は各アクティビティシナリオを確認し、さらに全体の体験を通してチェックすることが大きな役目である。

失敗と挫折を味わいながらも、小規模にして再チャレンジしたり、理解してくれる声の大きい人を見つけたり、それっぽく費用対効果を結び付けて発表したり、と今後もより良いサービス作りのために様々なアプローチでHCDを推進していくつもりだ。その結果をまた皆様にお伝えできれば幸いです。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。