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私は現在アメリカに在住していまして、余暇にはヨセミテなどの国立公園を訪れるのが趣味の一つで、休みのシーズンになるといつもどこかの国立公園にいってキャンプ等を楽しんでいます。アメリカの国立公園で関心するのは障害者の方でも楽しめるような配慮が整っていることです。各トイレはもちろんのこと、車椅子の方でもアクセスできる鑑賞エリアが必ずあります。アメリカにはADA(米国障害者差別禁止法)という法律があり、対応しないことは違反となりますし、そもそもダイバーシティを重んずる(少なくとも表面上は)国としては当然なことなのだろうと思います。
それに比べると駅の車椅子対応もまだまだだし、日本は遅れているなあと勝手に思い込んでいたところ、あるデザイン系のPodcastを聞いていたらそのデザイナーの方は日本を訪れたときに日本の公共のアクセシビリティに感動したと語っていて、一瞬耳を疑いました。え、日本にそんなすごいのあったっけ?と考えていたところ、道路や駅にある点字ブロックのことを言っていたのでした。目の見えない人のために駅や街中にブロックが配置されているのはとてもクールだと。言われてみればたしかにそうで、灯台下暗しといいますか、当たり前過ぎて気づいていなかったことでした。
一方で、どうしてこういった日本で軽視されがちなものが全国に広がったのだろうと不思議に思いました。気になって調べてみたところ、三宅精一さんという個人の努力によってなされたものでした。詳細は省きますが、彼は知人で弱視の方がいて、その方を助けたいという思いから最初は私財を投じて普及のために奮闘しました。そして最終的に全国、さらには世界にも広まったようです(少し前にGoogle Doodleで紹介されて話題にもなっていましたね)。点字ブロックが個人からのボトムアップのアプローチで広まったというのは個人的には納得感がありました。これは筆者の邪推ですが、もしこれが日本のお役所仕事としてのトップダウンのプロジェクトとして行われていたら、このような本当に役に立つものにはならなかったのではないかと思います。三宅さんの問題設定能力、そして何度ものプロトタイプを経て今の形なったというのはデザインプロセスのお手本のような話だと思いました。三宅精一さんは私の尊敬するデザイナーの一人になりました。
個人の強い想いが世界を変えられるということに勇気をもらいましたし、また私も自分の目の前にいる人を助けられるデザイナーでいたいなと気持ちを新たにした次第です。