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私は現在、広告代理店の株式会社電通でビジネスデザインを担当しています。具体的には、「ビジネスデザイナー」と「人間中心設計専門家」の両方の視点でプロダクトやサービスの統合的な体験設計を行っています。
「ビジネスデザイナー」としては、大きなビジネスのスキームを構築しつつ、そのビジネス自体が継続的に成り立ち、利益が出るビジネスモデルを目指します。ここでは、経営視点でいかに効率良く、合理的に、利益を出すスキームを構築できるかという点を評価軸として設定し、デザインしています。一方で「人間中心設計専門家」としては、ユーザーを起点として一連のUXやCXが魅力的かつ適確にデザインされているかというHCD視点でデザインし、評価軸としています。
実際のプロジェクトでは、プロダクトやサービスの企画コンセプトありきでビジネススキームを考えるパターンとビジネスのスキームを考えてから、そのスキームに合致する具体的なプロダクトやサービスを考えるという大きく2つのパターンがあります。前者は、「人間中心設計専門家」から「ビジネスデザイナー」へ、後者は、「ビジネスデザイナー」から「人間中心設計専門家」へプロジェクト内で私の役割はグラデーションで変わっていきます。
そして、どちらのパターンのプロジェクトにおいても、「ビジネス」VS「HCD」というせめぎ合いがしばしば起こります。ビジネス側からすると最小の投資で最大の効果を発揮したいということで、HCD側からの提案に対して、「このUXを変えたら、どれだけUXが向上するのか?」「それでいくら儲かるのか?」客観的かつ科学的なエビデンスが欲しいというような議論が起こりがちです。残念ながら、このUXを変えると売り上げがこう変わるという具体的なシミュレーションが毎回出来る訳ではないので、その際は、定量や定性調査、プロトタイピング、最近では、脳波など生体情報計測の手法を取り入れて、できるだけ客観的な数値データにするこことで、両者の理解を図るというプロセスを入れていきます。
最近では、ユーザにとって価値があるプロダクトやサービスのデザインができるだけでなく、いかにビジネスとして成立させるか、社会実装できるか、そのような「ビジネス」+「HCD」という期待とニーズがとても高いと感じています。私もその期待に応えられる魅力的で「儲かる」体験を統合的に設計する「人間中心設計専門家」兼「ビジネスデザイナー」を目指していきたいと思います。