更新日:
電気自動車の普及が進んでいる。給電ステーションもあちこちで見かけるようになってきた。となると次は、電磁誘導を利用した非接触型の給電装置がどこまで普及するかに興味がわく。ところで、この非接触型給電装置の受信装置を車のどの部分に設置するかに関する標準化の議論で、米国と日本で揉めたというニュースを読んだ。いわく、米国は車の前方部分に、日本は車の後方部分に設置することを主張したとのこと。その背景には、人間の習性として、広い駐車場では前向き駐車をしたがり、日本のような狭い駐車場では後向き駐車をしたがるという性質があるのだと、その記事では解説していた。つまり、狭い駐車場では、区画に入れるときに苦労してでも、出るときに楽をしたいという心理がはたらくから、ということだそうだ。
しかし、この記事を読んで、大きな違和感を私は感じた。ここで、給電装置は駐車場の路面に、受電装置は車のシャーシ裏面に設置するものであることに注意してほしい。すなわち、電力は横からではなく、車の下から非接触で給電される。したがって床面(駐車場路面)のどこに置くかという課題であって、駐車場の端に設置しなければならないという制約は、本来、ないはずだ。車を区画に入れるときの状況を考え、利用者(運転者)の立場で考えれば「駐車場区画の真ん中に給電装置を設置し、車床の中央に受電装置を設置すれば、前向き駐車だろうが後向き駐車だろうが、どちらでも対応可能のはず」ということは明らかだろう(位置合わせの問題が残るが、その点については先の議論でも同様の課題が残るはずで、これについては別途考えることとする)。
私は電気自動車の給電装置に関する専門家ではなく、どこか大きな勘違いをしているかもしれないので、もしそうであったら指摘していただきたいところではあるが、そもそも議論の前提条件が間違っていたのではなかろうか。車メーカーのデザイナー氏とこの議論をしたところ「自動車会社ってウォーターフォール型の開発プロセスだからか、上流から降りてきた前提条件を疑わないし、変えようとしない傾向がありますね」とのこと。記事で紹介されていたこの議論はまったくもってHCD的ではなく、HCDの考え方を、まだまだ普及させていかないといけないなと強く感じた一件であった。