HCDコラム

新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちに大きなダメージを与えたと同時に、世界を大きく変革するトリガーを引きました。それにより、人々の行動は混乱しつつ大きく変容してきたことは、みなさんご経験の通りですね。人々の行動が変容しているということは、HCDの力の見せ所だと言えるのではないでしょうか?

そのHCDを自社の業務に活かしたいと思っている方は多いと思いますが、従来型の仕事が定着している企業で、「HCDサイクルを回そう!」と言っても耳を傾けてもらえないことも少なくないでしょう。HCDは、これまで信じて疑わなかった仕事のやり方を否定する「異教」のように映っているのかもしれませんね。

かつて私は社内のエンジニアに対してHCD入門教育を実施して大失敗しました。そもそも、彼らは、自分たちのやり方に自信もプライドもあるので、まったく響かず、それどころか、反感を買う結果となり、「異教HCD」拒絶マインドが出来上がってしまいました。

そこで、作戦を変更し、「『HCD』という言葉を使わず、『HCD』サイクルを回して、『HCD』マインドを醸成する」。これを基本方針として、社内教育プログラムを立ち上げました。

しかし、プライドの高いエンジニアに対しては、上から目線の「教育」や「セミナー」を嫌うので、「私自身が勉強したいので一緒にやりませんか?」というスタンスです。

勉強会『技術者の専門性をもっと活かすスキル 』シリーズ(全10回)と称して、「私が学んでいることを紹介するので、興味のあるところを一緒に学びましょう」と呼びかけました。もちろん、共通の裏テーマは「HCD」です。

ポイントは、従来の知識や経験、方法を肯定し、更に有効に活用することを目的としたことです。これだとプライドを傷つけないので、障壁は低くなりますね。

10回のテーマは「HCD」関連分野やHCDが使えそうなものを選びました。また、「自分ごと化」してもらうために、業務に繋がりそうなタイトルにします。例えば、「コトづくりのためのモノづくり-サービスデザインから技術を導き出そう-」「成果や提案を効果的に伝えるプレゼンテーション-聞き手の体験をデザインしよう-」などです。

時間も手間もかかりますが、着実にHCDマインドは醸成されつつあり、漸くスタートラインに立てました。また、「勉強会」の名の通り、私自身が一番勉強になりました。その結果、私の話に耳を傾けてもらえるようになり、相談もいただけるようになりました。

歩みは遅いですが、こんなやり方も悪くないですよ。
さぁ一緒に、HCDで素晴らしいアフターコロナの世界を創りましょう!


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。