HCDコラム

関西3府県の緊急事態宣言が解除され、首都圏と北海道の解除ももうまもなくという報道を聞きながらこのコラムを書いています。一時期の緊張感は少し落ち着いてきましたが、Post CONVID-19社会はどのように変化するでしょうか? 現在、私の所属する大学はすべてオンラインで授業を実施しており、多くの大学も同じだと思います。まだ始まったばかりですが、その様子を少しだけ紹介・共有したいと思います。

芝浦工業大学は、5月11日よりすべてオンラインで授業を開始しました。4月初めに緊急事態宣言が発出され、少し遅れてのスタートとなりましたが、始まるまでの期間に大学全体でできる限りの準備を進めたことから今のところ大きなトラブルもなく進んでいます。2年前のコラム で紹介した2年生のUXデザイン演習も現在完全にオンラインで実施しています。演習授業はオンラインでは無理だと思っていたのですが、今のところいい感じで進んでいます。初回は半分以上の時間を履修者全員の自己紹介に費やし、初回の後半と第2回にかけてKA法ワークショップを行いました。約70名の履修者が12のグループにわかれて、Zoomのブレークアウトルームにて活動します。第2回では各自が事前に記入してきたKAカードを画面共有しながら出来事、心の声、価値を説明し、意見交換しました。カードが見やすいことから紙での共有よりも意見が出やすかったようです。価値が出そろったら、価値マップの作成です。今回はGoogle Slideを使ってグループごとにKJ法を実施。作業が分担でき、全体が見やすいため付箋よりも効率的だったと思います。異なる色のカードや矢印、グループ化用シートを事前に準備しておいたのも効果的でした。また一部、他グループの進捗が見れるようにしておいたことで、互いに影響しあって作成が進みました。最終的に個性的な12の価値マップが完成しており、結果はまた機会をみつけて紹介できればと思います。

一方、講義中心の授業については1コマ100分の構成に試行錯誤しています。例えば月曜2限にユニバーサルデザイン(UD)を担当していますが、今年は150名の履修者がおり、学生ひとり一人には全く目が届きません。現在必ず実施していることは、5~6人のグループにわかれてのディスカッションタイムを設けること、Google Forms等で事前に作成したクイズを授業の途中で実施することです。クイズ実施の時間帯は明示しないようにしています。またディスカッションしたことをベースに毎週小レポート(リアクションペーパー)を提出してもらっています。どれも対面授業でも実施していましたが、すべてを毎回オンラインで実施するため準備とレビューに多くの時間を費やしています。また、学生も連続して複数授業を受講することがあるため、100分の中でも姿勢を変えたり、リラックスしたり、緊張感をほぐす時間等を設けるよう配慮しています(グループディスカッションは学生だけなので結構リラックスして取り組めていると思います)。

3年生の演習授業では、4月から「Post CONVID-19社会へのUXデザイン提案」というテーマに取り組んでもらっています。各自がPost CONVID-19社会を想定して、現在制約を受けていること自体の解決だけでなく、本質的に必要なことは何だったかを考えるよい機会になっていると思います。状況が変わるとこれまでの常識が常識でなくなることは、HCD/UXデザインに関わっている方はよくご存じで、注意して実践されていると思いますが、あらためて私自身が多くの先入観にとらわれていることに気づきました。ほんの一例ですが、「演習授業=オンライン授業では難しい」ではないことに気づき、その演習授業で何を学んで欲しいか(達成目標)に立ち戻って、四苦八苦しながら毎週の授業を組み立てています。
最後に「在宅ワーク/在宅学習を行う際の人間工学ヒント」 を紹介します。今、何よりも大切なことは、一人ひとりが心身ともに健康でいることだと思います。くれぐれもご自愛ください。そしてHCD-Netメンバーのみなさんと一緒に、Post CONVID-19社会が明るく、活気のある社会となるよう取り組んでいきたいと思います。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。