HCDコラム

はじめまして。横河電機という会社で制御システムや計測機器などのデザインを担当しているものです。突然ですが、ここ半年ぐらいインタビューにハマっております。

HCDにおける「調査」には色々なものがあると思いますが、デプスインタビューのやり方を学んでから、私は頻繁にインタビューをやるようになりました。と言っても、ユーザーにそんなにたくさんインタビューする機会は残念ながらありません。では誰にやっているのか?それは「身内」です。

「身内」というのは、「社内の色々な人」です。私はデザインの部署にいるので、一緒に仕事をするエンジニアや、商品企画の方、同僚であるデザイナーなどです。

きっかけは、とあるデザイン依頼時にとても印象に残る企画書を見た事です。「この企画書を作った方に会ってみたい。会って、なぜこういう企画になったのか深く聞いてみたい。」と思ったのです。すぐにアポを取り、準備をし、実行しました。1時間程度の話の中でしたが、その企画の経緯やそれにかける担当者の熱い想いを聞くことができ、要求された仕様の背景を理解する上でとても役に立ちました。同時に、「社内で把握できていることとユーザーに聞かないとわからないこと」が整理でき、やみくもに「ユーザー調査させろ!」と騒ぐことはなくなりました。

また、何かのついでではなくきちんと時間をとって相手のことを聞き出すので、長年一緒に仕事をやってきてそれなりにお互いのこと知っているはずの人でも、何かしらの発見があります。私の場合、「あの時、そんなこと思っていたのですか!」と過去の共通の出来事について再発見することがしばしばあります。ああ、もっとこの人とあの時点で話しておくべきだった。そうしたら、今の到達点も変わってきたはず…などなど反省することが多いです。

HCDを実践しようとすると組織の壁に悩まされることも多いのですが、壁となる組織にいる方々も、私たちと同じようにユーザーに喜んで使ってもらいたい、と思って仕事しているのは間違いのないことだと思っています。インタビュー活動を始めてからは、その想いを聞き出して共有して、「ああ、そういうことだったら、こういう風にやってみたいのだけどどうでしょうか?」というアプローチを心がけるようになりました。

新型コロナウイルスの影響で今までにない行動変容を強いられた私たちは、業務はもちろん、手がける商品についても意識が変わっているかもしれません。「どうしてますか?どんなふうに変わりましたか?ユーザーはどんなふうに変わっていると思いますか?」…次回はこんな質問から始めてみようかなあと思っております。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。