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新型コロナウイルスは人から人へと感染するため、人と接触しないことが感染防止に効果があります。それ故、いわゆる「三密(密閉・密集・密接)」を控え、ソーシャルディスタンスを保つライフスタイルが浸透してきています。また、「移動」の概念を変えてしまったといえます。
コロナ禍以前から、旅行などの際の一連の「移動」という手段を、主にスマホアプリ上で予約や決済、発券までを一貫して提供するものとして、MaaS(Mobility as a Service)が注目されていました。
しかし、都市の移動者数が元には戻らず、鉄道やバス、タクシーに乗る人は減ったままになると、移動そのものが少なくなるため、MaaSの恩恵を受ける人は限られ、導入による公共交通活性化も望みにくくなり、移動促進ツールとして注目されたMaaSもそのままでは存在価値を発揮しにくくなってしまうでしょう。
そこで、目的地での行動(観光、飲食、物販等)においても一定の低密度のサービスを保つため、訪問先等での行動も予約制に転換していくことがより利用者ニーズに寄り添ったサービスへの発展と考えられます。つまり、これまでは「移動」という手段を目的(決まった時間に決まった場所に行くこと)に沿って提供することがサービスだったMaaSが、目的地での「ブッキングサービス」の機能も統合することで、より「効用」の提供に近づいていくことが可能となるでしょう。
すなわちMaasも、「移動」という手段を、より目的に近いカタチで提供するものとなり、移動中の混雑回避という目的に対しても、例えばより混雑の少ない時期、時間、移動方法等を提案する等の対応が必要になってくるでしょう。
より身近なことに話題を移します。このコロナ禍で、特に大都市を中心に急速に普及したのがテレワークです。多くのオフィスは三密があてはまる空間で、朝夕の通勤ラッシュ時の列車内もまたそれに近いものでしたので、多くの会社がテレワークに切り替えたのは当然でしょう。こうした動きに伴い、テレワーク、リモートワークを超えて、私たちの生活や仕事における「場」の概念が変化し、自宅でなくても休暇と併用して旅先で仕事をする、「新しい働き方」としての「ワーケーション(ワークとバケーションによる造語)」が急速に注目されるようになってきました。実際、筆者も、にわかにこの言葉を目にするようになりました。
新型コロナウイルスは、私たちの生活に不可欠だった「移動」そのものを控えなければいけないという難問を突きつけました。しかもまだしばらくはウイルスと共存する“ウィズコロナ”の生活が続くことになるでしょう。
やや大袈裟な表現かもしれませんが、“コスト(時間、労力、費用)をかけ、さらには感染のリスクを冒してまで移動することの必然性・価値があるか”という判断が「移動」という行動を起こす際に入ってくるようになったといえます。
そうしたさまざまなスタイルの変容の中で、目立ってきたキーワードであり概念の一つに「ニューノーマル」があります。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私たちは、都市封鎖、在宅勤務・学習を経験し、その中で、新しいコミュニケーションやコラボレーションのツールやシステムが使われるようになってきています。
「デジタルでの体験の価値」もまた、ニューノーマルといえるでしょう。
11/27,28に開催されるHCDフォーラム2020のテーマも「ニューノーマル」、もしくはそれに近しいものになります。
開催形態もフルオンラインに決定しました。よって「移動」は伴いません。これまで参加しにくかった遠方の皆さんも、「距離・移動」のハードル、弊害が無くなります。
1日目は、働き方、学び方、暮らし方など、「ニューノーマル」を考えるための多岐に渡る視点で基調講演者の選定を進めています。
2日目には恒例の冬季研究発表会の実施はすでに決まっていますので、ぜひ発表やご参加をお願いします。
是非、“人間中心”の「ニューノーマル」、そしてその新たな体験価値について一緒に考えましょう。