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昨今では、脳の活動や視線の動きといったヒトの生体信号を計測し、UI・UXに活用する動きが活発になってきています。私は脳科学ベンチャーに勤務しておりますので、自社が取り扱う脳測定技術について紹介します。
そもそも脳の活動とは、1000億を超える神経細胞(ニューロン)の活動です。神経の活動というのは、ニューロンがエネルギーを消費し、繋がっている他のニューロンと電気信号をやり取りすることであり、エネルギー源としての酸素が必要とななります。酸素は、血液中のヘモグロビンを介して、脳へと供給されています。脳は、常に活動しているといって良いですが、特定の認知活動(外部刺激や実験課題の遂行など)を行うことで、脳内で局所的に神経活動が活発になり、急激に酸素が消費されることになります。それによって二酸化ヘモグロビンが一時的に増加し、この酸素不足を補うために血流量が増加、神経活動の約6秒後に酸素化ヘモグロビン量がピークに達すると言われています。こうした局所的な脳活動に伴って生じる電気信号や脳血流動態の変化を捉えるのが脳測定技術です。
脳測定技術の主流ともいえる脳波計、fMRIなどに加えて、私の会社が主に取り扱っているNIRS(近赤外線分光法)というものがあります。NIRSは脳活動測定技術の中でも比較的新しい方法で、近赤外光を用いて脳血流動態を捕捉します。体動の影響を受けにくく、他の脳活動計測技術に比べて比較的日常に近い状況での実験環境下での計測を可能としています。
これらの脳計測とアイトラッキングなどその他の生体信号計測を組み合わせ、研究開発からマーケティングまで幅広い分野での応用がはじまっています。具体的には、車両などの乗り心地・素材の触り心地といった感性評価、児童玩具やシニア向け製品の商品開発、広告評価やWebサイト評価など多岐に渡ります。サービスを使用している際の認知負荷の計測などは、ユーザビリティを計る上での非常に重要なポイントといえるのではないでしょうか。インタビューなど従来型の主観評価と、こういった生体計測を組み合わせることで市場売上をより正確に予測できるというような研究もあり、今後ますます活用の幅が広がるのではと期待しています。