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長いこと研究事業部長という立場でご尽力されていた辛島先生の役割を引き継いだ飯尾です。
今後しばらくは事業部長という立場でHCD-Netの研究事業を活性化すべく、微力ながら貢献していく所存です。
とはいえ、皆様の活躍が中心、皆様が主役ですので、ぜひとも皆様のご協力を賜りたく、この場を借りましてお願い申し上げます。
さて、日々の業務に従事されている皆様のなかには、「研究?なにそれ美味しいの?」とお考えの皆様もいらっしゃることでしょう。そこで、今回は少し引いて考え、研究の意義、我々はなぜ研究するのか、しなければならないのか、研究活動に参加すると何が嬉しいのか、といったことを振り返ってみます。
研究という言葉を辞書で調べると「物事を詳しく調べたり、深く考えたりして、事実や真理などを明らかにすること。また、その内容。」と出てきます。これはHCDに関連する様々な業務に従事されている皆様の活動にも、ずばり、当てはまりませんか?
HCDの活動における多くの場面で、探求するというフェーズがあるはずです。すでにわかっていることを淡々とこなす業務ではありません。人間中心の立場をとりつつ新たなシステムやサービスをデザインする、その際には、詳しく調べ、さらに深く考えて、事実や真理を探ろうとするはずです。うわべだけの理解では足下を掬われてしまうでしょう。こうして考えてみると、研究って、意外と身近なものですよね?
HCD-Netは実務家の皆さんが、多数、参加されています。私も今でこそ大学に籍を置いていますが、民間企業に20年弱勤めていたので、企業の理屈もある程度わかります。したがって、アイデアは秘匿すべきものと考える立場も分からなくはありません。それでも、新しいアイデアを業界横断的にシェアすることの意義を強調したいところです。
「オープン・イノベーション」という言葉をご存知でしょうか。イノベーティブ(革新的)なアイデアを内外で共有し、さらに新しいアイデアを生み出すという考え方です。情報化が高度に進んだ現代社会においては、個人や組織が単独で起こせるイノベーションには限界があるでしょう。「協調と競争」という言葉があるように、協調すべき部分は協調し、最先端の部分で競争する。そのためにも、HCD-Netという箱のなかでの研究活動に参加することは十分な意義があると考えます。
例年、HCD研究発表会には多くの皆様が参加してくださいますが、一方で、なかなか発表側の数が増えないという課題があります。2021年度春季HCD研究発表会の閉会式でもご紹介しましたように、MSリサーチのサイモン・P・ジョーンズは、研究成果が出なければ論文を書いてはならないということはなく、まず論文でアイデアを共有するところから議論を始めるべきだ、と論じています。これは私も「全くそのとおり」と共感するところです。日々の業務でのこんな工夫があるとか、ちょっと悩んでる課題があるけれど解決策を探りたいというようなテーマがあれば、ぜひ、研究発表会で共有し、ディスカッションに参加してください。
思いがけないヒントを得られるかもしれませんよ。
これから、研究発表会への参加や機構誌への論文投稿を増やすための試みを仕掛けていく予定でいます。その第1弾として、先日の研究発表会では、評価委員のコメントを発表者にフィードバックするという新たなサービスを展開しました。その結果、発表者の皆様からは、たいへん参考になった、とても励みになる、などと、好評価をいただきました。論文を書くのは抵抗がある、書き方が分からない、というような皆様には、メンタリングで参加の敷居を下げることも考えています。皆様の研究活動へのご参加をお待ちしております。