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今年2月にオーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学をホスト校として開催されたサービスデザインの国際会議ServDesにて興味深いセッションがあった。
The Hitchhiker's Guide to Service Design: tensions and paradoxes along
the maturation of service industry in South Korea
https://servdes2020.org/events/14-the-hitchhiker-s-guide-to-service-design-tensions-and-paradoxes-along-the-maturation-of-service-industry-in-south-korea
韓国のサービスデザイン研究者と実践者によるラウンドテーブルで、韓国のサービスデザインの実態を議論するものであった。そこでは、ここ数年での政府主導でのサービスデザイン推進によって、デザイナーの共有過多によるデザイナーの賃金の低下、品質の低下が起こったということ、市民がサービス品質に対して「顧客目線で」関心を持つようになり、結果として受け身でサービス品質に対して注文をつけるようになっていったという実態が議論されていた。
日本でも、デジタル庁をはじめとして行政へのサービスデザイン導入が叫ばれているが、多くの場合これらはサービスデザインというより、まずユーザー視点の導入を意味している。
これまでそういった視点が入る余地がなかった行政においてユーザー視点の導入はもちろん必要な概念であるが、闇雲に導入を推進すると日本でも韓国のような状況に陥る可能性が高い。これからのHCD導入においては、市民もコミットするようなコデザイン概念として推進していかなければならない。HCD実践者は、現場としてのHCD導入だけでなく、それを包括する概念からのリードが求められるだろう。