HCDコラム

私は現在、みずほリサーチ&テクノロジーズで、システム開発におけるUX推進を担当しています。2年前に希望してこの業務に携わるまでは、システム開発の現場で独自にUXを模索・実践していました。

システム開発を担当していた頃、「長くお取引のあるお客様なのに、業務を知らない、システムの範囲しかわからない」「こんなにお客様のことを考えてシステムをつくっているのに、ユーザーにとって『本当に役に立つ』システムが提供できていない」という悩みを抱えていました。苦しく思い惑うばかりで、具体的なアクションがとれないジレンマです。

そんな折、偶然参加した社内研修でUXと出会います。そのときは「確かにその通りだけれど…」程度の印象でした。が、頭の片隅にキーワードは残っていたのだと思います。翌年、別の社内研修で再度UXに触れたときに、「なるほど!!」と急速に咀嚼が進み、研修会場からの帰路、希望にあふれたことを覚えています。

そこからは機能検討にペルソナを活用したり、お客様から伺った話を元にエクスペリエンスマップを作成したり、少しずつシステム開発にUXを取り入れるようになりました。UXへの納得感が具体的な行動に繋がり、同時にお客様の業務についての理解も進む。次第に、想定外運用によるシステムエラーが減る、提案を元に要件定義がスムーズに進行する等の嬉しい効果も得ることができました。

お付き合いの長いお客様へ改めて業務について質問することには、「今更で恥ずかしい」という躊躇がありました。不安を抑えて一歩踏み出してみると、お客様からは「ぜひ業務のことも知ってほしい」と好意的な後押しを得られ、双方が抱えていた業務・システムの疑問や課題を共有し解決に向かう好機とすることができました。

素直にわからないことを認めて、勇気をもってUX適用に挑戦すること。難しいようで簡単、簡単なようで難しいそれが、ジレンマを解決する最短ルートでした。

このような体験を経て、自分と同じようなシステム開発の悩みを解消したく、今はUX推進担当として案件参画・人材育成に携わっています。システム開発にはUXだけでは解決できない課題もたくさんあります。それでも、UXがより普及することで、ユーザーにとって『本当に役に立つ』システムが世の中に増えていくことを目指して活動をしています。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。