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このタイトルは、2012年に出版された書籍中の章のタイトルから来ています[1]。サブタイトルを含めると“TowardsHappiness:Possibility-DrivenDesign”です。それまでのインダストリアルデザイン、インタラクションデザイン、HCIデザインが、既存の問題の改善や解消に焦点をあてる問題駆動型(Problem-Driven)の傾向にあったのに対して、人々の幸せに直接焦点をあてる可能性駆動型(Possibility-Driven)デザインが提案されています。
可能性駆動は必ずしも「現在」の状態に言及せずに、ユーザーの「未来」の幸せ(な感情や体験)を直接追求します。この章の著者であるP.DesmetとM.Hassenzahlは可能性駆動型の流れからそれぞれEmotionalDesignとExperience Designの研究をリードしています。
それでは、HCDは何によって駆動されるのでしょうか。HCDは製品やサービスの「現在」の状態に焦点をあてて問題を改善したり魅力を高めたりする、問題駆動型の側面が強調されることがあります。プロセスは漸進的であり、ユニークで異質な根本的イノベーションを生み出せないという欠点はD.A.NormanやR.Vergantiも言及しています[2]。一方で、可能性駆動型は現在の状態(手段/技術/機能/etc.)に制約されないため、ユーザーの慣行やニーズに根ざしつつ、非連続的で根本的なイノベーションを生み出す可能性があると説明されています。
とはいえ、可能性駆動型デザインの理論と事例の蓄積はまだまだ少なく、デザイナーの理解だけでなく、デザインプロジェクトの期間や費用などに「遊び」が無ければ実践しづらいものです。まずは、アイデアが行き詰まったときなどに、デザインを異なる開始点(問題/可能性/感情/体験/etc.)でリフレームして、新たな解決策のヒントを探ってみるのも一つのかかわり方かもしれません。
[1]https://doi.org/10.1007/978-3-642-25691-2_1
[2]https://doi.org/10.1162/DESI_a_00250