HCDコラム

ここ数年、仕事柄よく取り組むDXですが、最近は、さらにGXがトレンド入りして、DXの意味するところの「〜Xは変革を意味する」がいよいよ一般化してまいりました。

DXやGXはもちろん、この〜X表記に意味があり、DXならdigital transformation(デジタル変革)、GXならgreen transformation(次世代エネルギー変革)については、それぞれ次世代に向けた施策を先送りすることなく、喫緊の重大課題として今すぐに大胆な変革を行い、将来の可能性を少しでも拓くべきだという強烈なメッセージが込められており、綴りにXがないにも関わらず、英語で不定形や将来の変化を表す変数Xを使い、見た目や発音にインパクトを与えています。
かといってUXについては「UXと表記しますが、〜Xは変革の意味はありません」とあえていうのも、最近はどうかと感じています。

もちろんUX表記は読み替えではなく、experienceの単なる短縮形ですが、ここで人の体験の変革という観点で深読みして、人を近似して人を凌駕する能力を発揮するなど、急速に発達したAIなどの人工知能との関わりを、感性のある種の変革と捉えるのはいかがでしょうか。つまり近い将来AIがシステムなどのUX設計を支援することで、人のみが考えるUXと区別するために、あえてuser experience transformation(ユーザー体験の変革)として、UXと表記することです。

HCDでは、UXをより人の体験を基準に置くと定めていますが、デジタルでしかも複雑系の処理を得意とするAIなど人工知能が、すでにマーケティングやウェブのUX設計に取り入れられていることを考えれば、人の思考を近似できるAIがもたらす、効率的で高度な設計能力は、少子高齢化による技術者不足からも利用の増強が強く期待されるでしょう。しかしそれと同時に好感度や満足度などの提供価値は、人を主観とする評価基準のため、どのような判断が適正か、消費者や企業を問わず議論が高まると思います。

そうした議論の場において、HCDの専門家としては「人工知能はテクノロジーだから、エンジニアに任せて我々はヒューマン・インタフェース考察だけに専念しよう」などと見識を狭めず、人の体験の専門家として人工知能の成果物とはいかがなものか?など、DXやGX同様に人類にとって存在意義を問う重大な課題であると広く捉えれば、AIの利用が不可避の将来において、本来UXが基準とする心技体のようなよりバランスの取れた、好ましい共存共栄を図れる助けになると考えています。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

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