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IT企業から大学教員へ転職して1年余り、HCDを学生に教える毎日を過ごしています。学生からの授業の感想には「新鮮な目から見たHCD」が書かれていて気づきをもらうことも多いです。
ある学生からの感想は「私が先生のお話を聞いて1番驚いたことは、実際に企業で新しいサービスや商品を考えるときに、ユーザーのことよりも予算や納期のことを考えなければならないという現場の事実についてです。私は、商品やサービスを利用することになるユーザーのことを第一に考えていると思っていました。」というものでした。
ユーザーの立場にしかたったことのない学生にとっては、"ユーザー中心"しか存在しないというのは結構な衝撃でした。会社に入って開発項目や予算や納期を考える経験を積むと、ユーザーのことはいつの間にか忘れられ、本コラムの読者の方は日夜「HCDは重要」と布教活動されていることと思います。学生あるいは新入社員くらいまでは持っているであろうその気持ちを、なんとか忘れさせない方法はないか、と思います。
また別の機会に観察について教えた時には、中学校の教員志望の学生から「観察することは教育現場でもとても活用でき、特に事実と解釈を分けることは生徒理解にすごく最適だと思いました。観察を妨げる人間の癖などどれも教育に生かせることばかりですごく勉強になっています。」という感想をもらいました。
HCDの適用領域はいまやシステムやサービスの開発から組織のデザインまで拡がっています。教育という場でのHCDの価値を、学生自身が発見したことは素晴らしいですし、またHCDが将来役に立つと感じてもらえたことは、私にとっても大きな励みになりました。