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COVID-19でオンライン授業が一般化した事実は、キャンパスが都内各所に散らばる私の勤務先大学にとっては追い風となりました。以前から、通信制大学ではなくとも一定単位数の範囲でオンライン授業は認められていましたが、その制約よりも、このような形態の授業もアリと教員・学生の双方から認知が進んだ点が、大きな進歩です。
私も現在、「AI/データサイエンス・ツール科目2」という科目名のオンデマンド授業を1科目、担当しています。オンデマンド授業というのは、講義動画を自由な時間に視聴して、付随する課題などをこなしながら学習する形態の授業です。ところが、この形態は、教室で対話的に実施する授業と比べると、効率が悪いように感じます。
同科目は、Rubyというプログラム言語を学び、Ruby on Railsというウェブアプリケーション開発フレームワークを使用してWebアプリ開発の基礎的なスキルを身につけようというものです。原則として何らかのプログラム言語を利用してプログラミングしたことがあること、という履修条件を設けているものの、簡単なところで躓く学生の多いこと!
教室で対話的な授業ができないために、学生からの質問はLMS(学習支援システム)の掲示板を用いて受け付けています。しかし、たいへん残念なことに、「それは動画できちんと説明したはずだぞ?」という初歩的な質問もしばしば投稿されます。
なお、教員のほうも、本来、伝えるべき内容を漏れなく伝えているかというと、疑わしい点もあります。学生を教育のユーザーととらえるのはいささか不都合があるかもしれませんが、学生の視点で考えてみると,次の手順が達成されるような講義動画が用意されなければなりません。すなわち、A.「理解すべきすべての事項」を「講義動画で漏れなく説明」し、B.「学生が飽きないようなわかりやすい表現」で伝え、学生がC.「しっかり理解する」こと、です。
ここで、A.とB.は、講義動画を用意する教員に責任があるでしょう。一方、C.は学生側の責任でもあります。COVID-19パンデミックの際に、某大学で「同時並行的に複数の授業動画を視聴していた」ことがばれ、単位取り消しになったというニュースがありました。そのニュースは極端な例としても、1.5倍速〜2倍速で視聴する、飛ばし飛ばしで視聴する、などの行為は、タイパを気にする学生たちにとって、日常的になっているようです。
そのような試聴をさせないような工夫も求められるので、オンデマンド授業の講義動画を用意する教員もなかなか大変です。「HCDの手法を援用すると、少しは楽になるかもしれない」……最近はそのようなことを考えるようになりました。