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私が所属する統合ソリューションカンパニーでは、サービス立ち上げから成長まで、ワンストップで支援しています。これまで色々な案件に携わってモノづくりをする中で、心がけるようになったことがあります。
それは、UXデザイナーがハブとなり、UX起点でプロジェクトを動かしていくことです。
これができるのがUXデザイナーのやりがいであり、楽しさを感じる部分だと感じています。
それを強く意識するきっかけであり、ユーザーを捉えるということについて、最も印象に残るリサーチがあります。それは子どもを対象にしたリサーチです。
子ども向けアクティビティ施設の予約を子ども自らができるか、楽しんでできるかか、というUTを小学校低学年の子どもに実施しました。もちろん、これまで子ども対象の調査はやったことがありません。大人とは言語化力が違うこともあり、どんな返答が返ってくるか想像できない、会話のキャッチボールがしっかりできるか不安でした。そのため、「安心して子供が話せる環境づくり」、「子供が伝えたいことを理解するための仕組みづくり」をして、しっかりコミュニケーションを取ろう、あとはじっくり観察しようと思い、臨みました。
安心して話せる環境づくりとしては、最初に全体で集まり子どもと対話しながら、今日の目的や何をしてもらうかを簡単に説明しました。WSも用意し、待ち時間も楽しく過ごしてもらいました。
1対1の実査の際も、近況や好きなことを話しながら、信頼関係を築き安心して話せる空気作りをしました。
子供が伝えたいことを理解するための仕組みづくりとして、ママのイラストを貼ったコップを用意しました。これは、子供が何かあった時に「ねぇママーママー」という状況が再現できるように置いたものです。飽きたからやめる、質問したい、というときはこれに話しかけてねと伝えました。
他には、言語化を助けるためのツールを準備しました。
唇にバッテンが書かれた札を用意し、質問されても答えられない時のサインとして活用し、「私がこれを使った時は自分の思ったままに自由にやってね」と伝えました。
また、スケールが示された図と子どものイラスト付き矢印を用意し、利用意向を確認することや、感想がいくつか書かれた紙を選んでもらい操作についての感想を確認する工夫をしました。選んでもらうだけでなく、理由を丁寧に深ぼっていきました。あとは操作の様子や表情をひたすら観察しました。観察して、対話していくと、子どもは素直な評価者として反応をしてくれます。
用意したシナリオが自分と違えばツッコミが入ります。直感的にどんどん操作していきますが、難しかったり、楽しくない時の様子は手に取るようにわかります。
気を遣ってくれた感想かと思いきや、ふかぼっていくと大人には気づかないような視点で、プロダクトの良さを教えてくれることもありました。子どもは素直に、本質を話してくれると感じました。ふと考えると、これは大人に行う普段の調査でも同じだと感じたのです。準備をした上で、じっくり観察し、丁寧に対話するからこそ、ユーザーの本質的なニーズが引き出せるのだと思います。
この経験を通じて、信頼関係を築いた上で、言葉を鵜呑みにせずにしっかりと観察し、前後の文脈の意図を汲んで、必要であれば対話で確認する、ユーザーを捉えきることの重要性を学びました。
子どもの様子をよく観察しユーザーを捉えきれたからこそ、どんな体験が重要なのか、具体的にどんな手段が有効か検討できました。これからも、ユーザーを捉え切り、エンドユーザーと作り手を繋げ、クライアントの思いや要望を形にして、UX起点でモノづくりを続けていきたいです。