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私が現在のチームで人間中心設計の導入に取り組みはじめて5年が経ちました。
最初の頃と比べて、今ではエンジニアが積極的にユーザビリティテストに参加し、メンバー全員でユーザーに提供したい価値について議論するなど、チーム全体で人間中心設計に取り組むことができています。
初めはデザイナーはUIデザインだけを担当する立場で、開発プロセス全体に人間中心設計を導入することの理解は得られませんでした。理由は工数やスケジュール、元々あったプロセスへの影響が大きいと考えられていたからです。
そのため、まずはデザイナー単独でユーザビリティテストに取り組むところからはじめ、「時間がなくてもまずやってみる、とにかく回し続ける」の精神で推進しました。
繰り返し実践するうち、課題が洗い出せる、その分開発の巻き戻りが少なくなるなどの効果が現れたことでプロセスとして理解されはじめ、次に要件定義、さらに調査・分析へとデザイナーが関わる範囲が広がっていきました。
プロセスとして定着すると、次は取り組みの質を向上させた上で、デザイナー以外も参加しやすいようにフォーマット化に取り組みました。フォーマット化が進むと、デザイナー以外のメンバーを巻き込みやすくなります。
職種を越えた多くのメンバーの視点が加わることで、調査や分析、ユーザビリティテストの質もさらに向上し、チームとしてより良いアウトプットが出せるようになりました。
そしてチーム全体に「ユーザー(顧客)を起点に進めるのがいい」という雰囲気が醸成されました。今ではPMやPMM、エンジニアからもUIの提案があり、提供する価値についての議論も活発に行われています。
ボトムアップで人間中心設計を実践する場合、時間、労力、そして何より根気が必要です。
けれども、段階的に周囲の理解を得ながら実践した分、チームやプロダクトにより適した形で導入することができます。
「時間がなくてもまずやってみる、とにかく回し続ける」ことからはじめたのは、間違いではなかったと感じています。