HCDコラム

早いもので、今年も12月となりました。来月からは第四四半期に入り、広報社会化事業部としては、例年通りアニュアルレポートを作成する時期がやってきました。アニュアルレポートといえば、先日、水本副理事長から教えていただいたPUMAのアニュアルレポートサイトの体験が非常に印象的だったので、今回のコラムではそのPUMAのアニュアルレポートについて触れたいと思います。
PUMA Annual Report 2023
https://annual-report.puma.com/2023/en/
このアニュアルレポートに関して、以下の3点が特に印象に残りました。
さまざまな閲覧環境に対応している
魅力的なコンテンツ表現
デザイン賞を受賞している

1. さまざまな閲覧環境に対応している
多くのアニュアルレポートは、PDF形式で作成され、ウェブサイトにアップロードされています。ユーザーはPDFをダウンロードして、レポートを読むことができます。紙のレポートと比べ、PDFは手軽にアクセスできる点で便利です。ただし、PDFのデメリットとして、特にAndroid端末では、ファイルをダウンロードしないと閲覧できなかったり、スマートフォンの小さな画面では文字が読みづらく、拡大して閲覧する手間がかかる点があります。
一方、PUMAのアニュアルレポートは、レスポンシブ対応のウェブデザインとなっており、スマートフォンでも読みやすい作りになっています。また、PDF版も用意されているため、ダウンロードして文書として保存したり、印刷して閲覧したりすることも可能です。

2. 魅力的なコンテンツ表現
アニュアルレポートは通常、企業の活動を伝えるためのレポートですが、PUMAのレポートは、動画やインフォグラフィックを活用して難解な情報をわかりやすく伝えています。また、マイクロインタラクションを取り入れることで、視覚的にも楽しめる内容となっています。これにより、雑誌やエンタメコンテンツを楽しむ感覚でアニュアルレポートを閲覧することができます。
こうした工夫を施すことで、アニュアルレポートを閲覧するオーディエンスにとって魅力的な情報発信が可能となり、従来アニュアルレポートに注目していなかった層にもアプローチできると感じました。例えば、PUMAで働きたいと考える求職者がこのレポートを閲覧すれば、その企業の印象が大きく向上するのではないでしょうか。

3. デザイン賞を受賞している
このアニュアルレポートは、Red Dotデザイン賞を受賞しています。
https://www.red-dot.org/project/puma-online-annual-report-2023-74060

もちろん、デザイン賞を受賞したこと自体が素晴らしいのですが、それ以前に、アニュアルレポートをデザイン賞に応募したその意気込みがとても印象的でした。この受賞により、アニュアルレポートもデザイン賞に応募する対象となり、「良い体験をデザインすることが評価されるものだ」というメッセージが広まったように思います。
PUMAのアニュアルレポートを制作するには多くのリソースとコストがかかるため、全ての組織が真似できるわけではないかもしれません。しかし、このような優れたレポートが発行され、高く評価されていることは、企業や組織の情報発信の在り方を見直す良いきっかけになると思いました。

HCD-Netでは、2019年度からしばらくお休みしていたアニュアルレポートを復活させ、それ以降毎年発行しています。多くのレポートと同様にPDF版ですが、限られたリソースの中で持続的にレポートを制作し続けるための仕組みを構築し、毎年リリースしています。組織の活動を紹介・発信するためには、このようなレポートを継続的に発行し続けることが非常に重要です。今後も毎年発行を続ける予定です。これはアニュアルレポートの執筆者や制作委員の皆さんの尽力のおかげであり、広報社会化事業部としても継続していきたい事業の一つです。
PUMAのアニュアルレポートから学ぶことは多いですが、同じように真似ることは現実的ではありません。しかし、将来的には制作や運用に余裕ができた際に、現在のレポートの閲覧体験をさらに向上させる方法を考えることができると思います。PUMAのレポートは、そうしたことを考えるための良いインスピレーションを与えてくれました。


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

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