更新日:
つい先日,何を買いたいということもなくネットショッピングサイトを見ていると,ミラーレス一眼レフ用のレンズが目に留まりました.よく見てみるとレンズではなくレンズスタイルカメラ(SONYのCyber-shot DSC-QX10)と書いてあります.そのフォルムからある予期的UXがもたらされ,衝動的にこのカメラを購入してしまいました.その際に思ったことを書きます.
私は無類のカメラ好きというわけではありませんが,何度かカメラを購入しています.その遍歴は一眼レフについてはCanon A1に始まり,New EosKiss, Pronea S, Nikon D70, Nikon J1 と推移してきました.その間にもスキー用,ダイビング用,実験用にと,いくつかの特徴的な機能(1cmマクロ,水中ハウジング対応,乾電池使用等)を有したコンパクトデジタルカメラも購入してきました.これらの購入遍歴は,銀塩, APS,SDメモリといったフィルムやメディアの変遷,デジタルの解像度の推移や特定の利用目的によるものでもありますが,根底には携帯性に富み,できれば被写界深度を調節して撮影できるカメラが欲しいというニーズを満たそうとしてきたことによるものです.私は旅行に行ったときや外食のときぐらいしか一生懸命写真を撮りません.ですから外出時に荷物にならず,それでいて本格的な写真が撮れるということを重要視しているようです.今回見た目はほぼレンズというQX10のフォルムをネットで見たとたん,旅先でこのカメラを腰にぶら下げ,手ぶらな状態で歩き回り,必要に応じてレンズのようなカメラを構えて写真を撮るという予期的UXが私にもたらされ,カメラを購入する予定もなかったのに思わずポチッとカートに入れてしまいました.この後少し冷静になり,購入者のレビューをチェックすると,被写界深度も調整できることが分かりました.一方でスマホとの連動が手間だとか,起動が早くないとか,そのためにシャッターチャンスを逃したとか,一時的UXやエピソードUXに関わる問題が指摘されていましたが,私の購入欲求は小さくなることなく購入に至りました.
今回の私の場合は,(確認したわけではないので確かではありませんが)製品のデザインが開発者の狙い通りの予期的UXを私にもたらし購入に至らせたケースだと思います.このように消費者にもたらされる予期的UXは製品購入の動機付け要因として非常に重要であり,開発者が狙った消費者の予期的UXをデザインによりコントロールすることができれば,消費者の購入欲求を高めることができると思われます.もちろん購入後の3つのUXが良いことも重要ですが,消費者に製品を購入させる観点からは,開発者が消費者の予期的UXをデザインによりコントロールすることの重要度は非常に高いのではと思います.開発者が狙った消費者にある予期的UXをもたらすように製品をデザインし,そのデザインが消費者に狙い通りの予期的UXをもたらすという,開発者が消費者の予期的UXをデザインによりコントロールすることが実際の製品で実現されているのかに非常に興味を覚えます.私は製品デザインに直接携わっていないので,このことを自ら確認する機会には恵まれていませんが,是非HCD-Netの研究発表の場においてこの事例を拝見することができればと期待しています.