HCDコラム

HCD/UXDという言葉は、知っている人の間では流行っていると感じても、知らない人にとっては未だに何のこっちゃ?という一般常識にもランクインしていない結局良くわからない世界と思わざるを得ない部分がある。
HCD/UXD専門家と言うが、この資格はHCD-Netが独自のコンピタンスを検討し、このコンピタンスに掲げた資質を現場の仕事で実践した経験者に対してその実績を認定したものである。従って、受験勉強対策のごとくある程度の過去問題等を参考にして申請書の書き方をマスターすれば実践経験が浅くても合格者にはなれると思うが、それでは肩書は認定されても、その普及に尽力し、真に世の中に役立つ実績を残した事にはならない。
元来HCD/UXDは、ソフトウェア開発のプロセス認証から始まった発想だと聞いているが、それを「デザイン」という世界に展開し始めたのはいつ頃からだろうか?もちろんデザイン設計のプロセスで人間中心設計的な概念を展開する事もアプリケーション分野の一つではあるが、もっと広い世界で採用・応用され得る手法として期待したい。ここで最も重要なことは、HCD/UXDの背景にあるユーザーを科学する考え方であり、表面的な一部の分野だけに通じる手法や技法をなぞるだけでなく、ユーザーの心を理解して定義できる能力である。
デザインシンキングやイノベーションの核心だと信じてその副産物や経過を裏返してもの作り生産者側の活動に適用する事も悪い事では無いが、最終的にはその製品がユーザーから高い品質評価を受けて称賛されるところまで磨き込まないと本当の達成感は味わえない。デザインという言葉の領域自体が茫漠としていて何を言ってもデザインという屁理屈も成り立つが、そこは議論するポイントでは無く、あくまでもユーザー目線に立って、ユーザーのために活用されるべき要求仕様を的確に表現することのできる技術でありたい。HCD/UXDは、ユーザーを科学する事に他ならないが、目新しい思想やもの珍しい新製品を肴に居酒屋で語るだけでは世の中の役に立っているとは到底言えない。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。