HCDコラム

天候不順な夏も一段落して、2016年度の前半も終りに近づき、職場では諸般の事務的な手続きをシステムで対応するように通知されるのですが、年に数回しか使わない社内システムなので操作方法が分らなくなっているものが多々あります。これがマニュアルを読んでも読解が困難なものが多く、どうして自社のシステムはこんなにユーザビリティが低いのかと悲観的な気分になりますが、いろいろな企業で働いている方に聞いてみても、イントラネット上で提供されている社内業務や手続きを行うシステムの使い勝手に満足しているという話はほとんどなく、むしろ使いにくさ自慢のようになることがあります。
少し古い記事になりますが、U-Siteのニールセン博士のAlertboxでもイントラネットの生産性の低さを指摘しています。(注1)イントラネットは、ターゲットユーザーも決まっていて、情報環境のコントロールも容易であり、ユーザビリティの良し悪しが経営的な指標にも明確に表れることから、もっとも改良がしやすいシステムであると考えられます。しかしながら、調査結果からは10年前のシステムと比較すると操作時間がかかり、ユーザビリティが低下しているとの結果が出ていました。記事の中では、業務の多様化により情報楮が複雑化している点やデザインの自由度が少ないパッケージ型のイントラネットソリューションを使用している点が指摘されていました。
 もちろん、こうした原因も大きいと思いますが、イントラネットの開発方針にユーザビリティという概念が抜け落ちていて、とにかく開発コストを少なくするという事に集中しているように思われます。一般に使われるシステムであれば、開発側と利用者側とで目的を達成するためのシステムとして、開発コストと使用してもらう事による収益のバランスが必要になりますが、社内システムは、開発者と利用者をつなぐ指標が明らかになっていないことが使いにくいシステムを生んでいる原因だと考えています。
 こうした状況を改善するためには、経営者や開発者の方々にも人間中心設計の考え方を理解していただきたいと思いますが、現状のHCDプロセスでは、そうした方々にも取り入れやすい包括的な定量評価の測定指標が整備されていないことが課題だと感じています。
 HCD-Netのビジネス事業支援部・利用品質メトリクス委員会で利用品質メトリクスの検討を行っており、こうした活動が進展する事で、日々の業務で利用するイントラネットのユーザビリティも向上し、企業の業績改善、ひいては日本の景気も上向いてくるのではと期待しています。
注1:https://u-site.jp/alertbox/intranet-usability


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。