HCDコラム

  人間中心設計になっているべきものなのにそうなっていないものの一つに案内看板があります。案内看板は人間への案内となることを目指していますから、見る人/読む人の事およびその人が置かれている状況を考慮すべきものです。一般的には、個々の看板作成時にゲシュタルトの法則などをきちんと適用して、表示内容にグルーピングの問題が無いなどの分かりやすい案内看板を作成する必要がありますが、以下のようにある速度で移動しながら見るドライバー向けの案内看板のケースでは少し違った考慮が必要になります。

  例えば、国土交通省や地方自治体が管理している道路標識(案内標識)の場合には、あるルールに従って統一的に標識が作成されていて、比較的分かりやすい道路案内になっているように思えます。しかし、あの有名な4方向すべてが「福井」表示という奇妙な案内標識を容認している事から考えると、やはり既存の作成ルールに対して何らかの考慮を追加する必要があるかと思われます。

交差点などでよく見かける一般的な施設・店舗案内が乱立している看板群の場合には、わかりにくい方向指示、ばらばらな書き方の地図表示、不正確な距離表示など、いろんな問題があります。一例として、矢印付きのものは、交差点への進入方向によっては案内のための矢印の向きが不正確な向きに見えてしまい、ドライバーを悩ませることがあります(これには単純な解決方法があります)。

こういった集合看板の場合には、看板が時間差で増えていくと、隣の看板よりも大きく目立つようになど競争的要素が加わる事もあり、全体としての統一性・一貫性は徐々に失われていきます。また比較的管理が行き届いていない道路脇の案内看板の場合には、表示内容の古いものがそのまま放置されていたり、注目して欲しい内容であると思われる肝心な赤色の文字/表示が色あせていたりしていて、案内看板の意味がなくなっているものもあります(脱色性の少ない赤色塗料を開発できればビジネスチャンスになるはずですが・・・)。

レアなケースとしては、案内看板の周りの木々の枝や垣根が育って看板を覆ってしまい、案内看板の役目を果たせなくなっている場合もあります。これらのケースへの対処としては、やはり適切な速度で移動しながらでも利用者が必要な情報を入手できるだけの視認性を備えた案内看板になっているかどうかを実地検証してみることが大事であると考えます。道路脇の看板に気付き、何の看板だろうかと目をこらして読んで見ると「わき見運転に注意!」と書いてあった、などという、笑うに笑えない危険な看板もこのような実地検証を行えば取り除けるのではないかと思います。


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