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免許の更新に東京・鮫洲の免許センターに行った。建物の大規模改修を行っているところで、建物自体はできあがっているが、空調はまだ、ということで、窓を開けて講習が行われていた。月末であったので、卒業式を終えた高校生が免許を取得に多く訪れていた。さすがに、最近改築をしただけあって、施設内の動線は割と最適化されており、「次は3番窓口です」というように、効率よく窓口をたらい回し(?)されていった。おかげで、大量にいた高校生と、世代の違う免許更新組とは混乱することなく粛々とタスクをこなしていた。なかなかうまくやっているな、と一瞬感心しかけたが、すんでのところで重要なことに気づくことができた。 私は免許を保持しており、今回は単にその更新を行う事務手続きをやりにきたわけであるが、そもそも、このフロー自体、必要な作業なのであろうか。行ったことは、1)手続き開始の書類をもらい名前などを記入、2)更新費用を払う、3)パスワード登録、4)適性検査という名の視力検査、5)写真の撮影、6)講習の受講、7)免許の引き取り、である。偽造免許証も増えているとのことなので、写真をその場所で撮影する、ということが重要なのかもしれないが(とはいえ、身代わりチェックはしていなかったように思うが)、講習以外はほぼ「手続きのため」のフローであり、別段更新にわざわざ行かねばならないようなものには思えない。つまり、この免許更新フローは、いかにフロー自体が最適化されていたとしても、本来もっと本質的なデザインが可能である、といえるだろう(この建物の設計およびサインを設計された方をdisっているわけはありません、念のため)。HCD/UXDを考える立場のものとしては、状況最適解に目を奪われず、そもそも必要なものであるかを考える視点を持ち続けたい。 さて、その講習である。残念ながら数年前に法定速度を超えてしまって、今回は違反者講習という2時間の講習であった。これまで違反者講習しか受けたことがないような気がするので、他の講習の内容はわからないが、今回も、道路交通法の改定箇所の説明や、事故を起こした人のビデオなどがその内容であった。道路交通法の改定箇所については、日本でも始まった環状交差点や右折信号のルール改定などの話で、このタイミングでないと知ることができないのはそれはそれで問題と思ったが、それはとりあえず置いておく。もう一つの主要なコンテンツである、交通事故被害者の方のビデオであるが、これはUXDの文脈でいえば、疑似体験を持つことで、事故を起こしたいやな気持ちを思い出させ(あるいは感じさせ)、その気持ちを抑止力として用いる、ということを狙っていると考えられる。確かに人間の気持ちとは現金なもので、喉元過ぎれば熱さを忘れるし、そういったビデオを見ると気をつけようと思うという意味で、一定の効果は感じられる。しかしながら、UXをデザインする立場としては、こういった抑止のための教育といったところにもっと別のアプローチがとれないものかと思ってしまう。事故防止を考えたとき、そこにはシステム側で事故を起こさないようにするアプローチ(自動運転や、アクティブセーフティのしくみなど)と、人間側が注意深く居続けるためのアプローチとがある。人間側は、システムが優秀になるとそこに甘えてしまい、注意を怠ったり、過信してしまったりしがちとなる。その部分を抑止するためになにかできることはないのだろうか。 いずれにしてもこれらのコンテンツもオンライン学習基盤に載せてしまえば、自宅での受講も可能なものであり、ますます免許の更新はもっと効率化ができるものであることを確信した。おそらく、そちらに効率化されない理由としては、関係者の方々の雇用の確保といった理由があることが推測されるが、お金は払うから、むだな建物や手続きは簡略化していただきたいと強く感じた次第である。