HCDコラム

  7月は大学における前期授業の総まとめの時期、学生は試験や演習授業の最終提出・発表等で忙しく、教員も指導、審査、採点等で忙しい時期です。このような教育現場の様子を少しご紹介します。

  前期は担当授業が多く、すべての学年の演習や講義があって大変なのですが、学生たちの成果発表や意見を聞けるのは楽しみでもあります。まずは1年生の「デザイン工学入門」。学科の必修授業で約150名が受講します。評価は毎週の簡単な小レポート、及び期末に試験を実施しています。期末の試験問題の最後に500文字以内の簡単な小論文を課しています。指定の語句を使って「よりよいモノづくりのために心がけること」というテーマで自分の考えを述べるというものです。今年は5つの語句、①HCD、②GUI、③UD、④VOC、⑤ユーザシナリオから2つを必ず使うことを課しました。ちょうど採点が終わったところなのですが、どの用語を使った学生が多かったと思われますか? 結果は、UD、VOC、ユーザシナリオが同程度、多く使われていました。UD(ユニバーサルデザイン)は15回の授業のうちの1回をUD特集としているので印象に残っている学生がいたことと、授業だけではなく、UDは一般的に認知度が高いことから納得できます。

一方VOC(Voice of Customer:お客様の声)はちょっと意外だったのですが、製品づくりのプロセス、目標設定、評価など複数の回で登場したことと、私が授業中に覚えておくようにかなり強調したからのようにも思います。あとユーザシナリオは、内容をほとんど理解していなくても「ユーザシナリオを考えることが重要・・・」などと用語として使いやすかったからのようです。これは私の出題の仕方が悪かったと反省していますが、「ユーザシナリオ」という用語を使うことで少しは印象に残ってくれたのではないかと期待しています。HCD(人間中心設計)を使っている学生もいましたが、UDやVOCより使いづらかったのかもしれません。興味深かったのはHCDを使っている学生はUXという用語も使っている学生が多かったことです。無難にまとめた文章が多かったですが、ずれた意見や考えもあり、来年や他の講義の参考にすることにしています。今回はひとつの授業だけの紹介になってしまいましたが、他の演習や授業の様子も機会をみてまたご紹介させていただきます。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。