HCDコラム

  先日あるメーカーさんから、カーナビゲのインタフェースを改善したHCDプロセスが妥当であるかについて、“監査レポート”の作成を依頼された。レポートの相手は、提案する自動車メー カーさんだという。自動車メーカーさんは、新しく改善されたインタフェースが、本当に“大丈夫か”が心配なのだそうだ。既存のユーザーは、新しいUIを受け入れてくれるのか、サポートするディーラーさんは、新しいUIを覚えるのに苦労しないか、、、などの心配があるらしい。

  確かに新たなインタフェースを提供するとなる際に、既存のユーザーへの配慮は不可欠だ。斬新なインタフェースでは、既存ユーザーがおいてきぼりになってしまうことも、無いわけではない。

  しかし、既存ユーザーの継続性を考えるあまり、叩かなくもいい石橋を叩いていることになってやしないだろうか。今回の依頼は、お話を伺う限りそのケー スだった。既存のユーザーへの配慮を言い訳にして、本当にユーザーにとってよいことは何かを見抜けていない。自社が提供するUXがどうあるべきなのか、 ユーザーが置かれている状況を理解した上での意志決定が不可欠だ。もはや、かつて覚えた既存のUIを使い続けるよりも、新たなUIを低い再学習コストで学んだ方が、ユーザーの利益にかなうことだってある。組織の意志決定においても、ユーザーの状況への理解は今後さらに重要となるだろう。

  日本のメーカーの中では、非常によいUXDやHCDの取組みやその成果が生まれている。しかし、組織がそれらをどう活かすかが、いまこそ問われている。ボトムアップのアプローチだけでなく、トップダウンのアプローチにも、HCDの専門家がぜひとも関与してもらいたい。

 


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HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。