HCDコラム

ショートコラム Vol.107 

  東京に「六本木農園」というレストランがあります。ここは、素材の良さを最大限に生かした独創的なメニューが人気の知る人ぞ知るお店です。一体、そのような魅力を持つメニューは、どのように生み出されるのでしょうか?その発想の原点を、料理長である比嘉康洋シェフに聞きました。

  一番大事にしていることは、採用する素材を提供している生産者と直接向き合って、その素材が持つ隠れた一面を聞くことだそうです。最も美味しい食べ方を知っている当の生産者の圃場へ行き、対話をして、その生産者しか知らない食べどきや、流通には乗せていない希少部位の情報などを引き出せたときには衝撃が走ると言います。メニュー開発においては、これらシェフ自らの体験が起点となり目標になります。「お客様に自分が感じた生産者の想いをそのまま伝えるためにはどうすればよいか?」と問いかけながら、調理法や盛り付けの試行錯誤に入るそうです。その試行錯誤の過程では、全くのゼロから自分の頭の中にあることだけで考えるとすぐに限界がきてしまうので、料理以外のジャンル(例えば、服や家具など)でよくできているものをよく観察して、そのコンセプトを組み合わせながら発想しているとのことでした。

  比嘉シェフの話を聞き、改めて考えました。これからの時代、サービス開発においても素材が持っている隠れた一面を知ることは、より重要視されるものと思われます。しかし、難しいことは、これまでにない技術、地域の文化、人など何が本物の素材で、何が隠されているのかが分かりにくくなっている複雑な社会を迎えていることです。そんな時代だからこそ、多様なステークホルダーと「素材探し」を「共に」することが必要なのでしょう。今、本物の素材探しのできる、信頼できる仲間がどれだけいるのかが問われている時代かもしれません。

 


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