HCDコラム

ショートコラム Vol.79- 90

新年最初の話題(美記 陽之介氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年1月号 - Vol.79)

毎年、新年最初の話題はラスベガスのInternational CESからもたらされます。そこでは新しい夢のようなユーザーインタフェースが華々しく提案されています。しかし、90年代に液晶とタッチパネルの組み合わせが日常のユーザーインタフェースを大きく変えたあと、それを超えるインタフェースは登場しないのが実情です。今、開発者の期待の中心は音声認識や画像解析の技術の向上にあるようで、それを活用したユーザーインタフェースが提案されています。

しかし、提案されている内容はまだまだ生活を変えるところまで行っていないように見受けられます。(もちろん、最新の研究は企業の中で行われていてショーにはでてこないのでしょうが・・・)。人間中心設計の思想や活動は、ともすると、あるものの改良という視点で語られることが多いのですが、このような技術の変革期には、人間中心設計を組み合わせて最新の技術を活用発展させることで、生活を大きく変える役割を果たすことができるのではないかと思っています。後世、”21世紀を変えたユーザーインタフェースは人間中心設計から生まれた”と言われるようになることが、私の今年の初夢です。

ビッグデータ活用における幻想(小俣 貴宣氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年2月号 - Vol.80)

膨大な断片的データの中から有用な知見を得るビッグデータ活用への関心が高まっている。この背景には様々な理由が考えられるが、データが巨大化した点で言うと、既存の蓄積されたデータに加え、ICタグやセンサー、そしてスマートフォンの普及によりデータ取得機会が増加したこと、TwitterやFacebookに代表されるSNSの普及によりユーザーがよりパーソナルな情報を送受信する機会が増加したこと、高度な画像処理技術により画像や動画のようなデータからこれまで取得出来なかった情報が抽出できるようになったことなどが挙げられよう。加えて、こうした偏在する多様なデータを迅速に収集し結びつける情報処理技術、ベイズ統計やデータマイニングに代表されるデータ解析技術の存在もブームに拍車をかけていることは間違いない。

そもそも既知の情報に基づき危険を回避し将来を予測することはビジネスに限らず人間の本質的な知的活動である。今後は新しいサービスやビジネスだけでなく、災害や犯罪などの危険回避にも活用が見込まれているらしく、優れた研究成果を期待したい。さて、このようにビッグデータの活用は大変ホットな話題なのだが、いくつかの主張の中には陥穽がある。筆者には「膨大なデータの中には価値ある宝が埋まっていて、高度な情報処理をしさえすれば半ば自動的にそれに行きつく」そんなナイーブな信念がある気がしてならないのである。

そもそも価値とは何だろうか。価値とは生物と独立に存在するものではなく、心の中に立ち現れる「意味のあるもの」である。小判は人にとって価値があるわけで、猫には無意味な存在である。データを活用する側の心を等閑視したビッグデータの有効活用は幻想である。では真の意味でのビッグデータ活用には何が必要であろうか。一つの方策は、データ処理だけに着目するのではく、データとユーザをいかにして引き合わせるか、という観点で活用行為全体をデザインすることである。この際大事なのは、課題に関係する有効であろう情報を感じ取る力をユーザ側に高めてもらうことである。その実現に向け人間中心設計の概念は勿論有効であるが、それだけではなく、これまでビッグデータ活用の文脈においてあまり語られることのなかった学習科学(認知科学領域)やインストラクショナルデザイン(教育工学領域)などの人文社会科学よりの研究領域が果たす役割もまた極めて大きいであろう。

タイにおけるバリアフリーやHCD(山本 敏雄氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年3月号 - Vol.81)

私は毎年数回はタイへ行ってますが、今でも文化の違いに驚く事が多いです。まずタイでは多くの障碍者が外で働いています。いろんな町を歩くと、視覚障碍の人が街角で音楽を奏でたり宝くじを売って生計を立てています。また、多くの聾唖者が手話と電卓を使ってTシャツを売ってたりもします。彼らが困ったときは周りの人が手助けします。 視覚障碍者がコンビニで買物をしたいのであれば代わりに買って来てくれます。 車椅子で道路を渡りたい人を見かけると周りの人に声をかけてみんなで運んでくれます。観光客に対してもです。バリアフリーです。

タイ人は困っている人には声をかけて手助けします。タイは仏教徒がほとんどで、他人に良い事をする(タムブンといわれ徳を積むことになる)と、次ぎに生まれ変わる際により良い生物に生まれ変われると信じられているからです。

反対に、タイのビジネスでは自分中心設計が基本なのにも驚きます。客を何だと思ってるんだと腹が立つ事もしばしばです。

そんな中で、バンコクのオリエンタルホテルは世界のビジネスマンから毎年世界一の評価を受けています。理由は客の望むサービスを提供しているからです。これこそHCDです。タイでHCDが普及するとビジネスに寄与しそうです。

HCDの役割(易 強氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年4月号 - Vol.82)

3.11震災で高齢者施設の入居者、職員が逃げ遅れたため、津波の被害で、多くの方々が亡くなられた。これを教訓に、静岡県では、高齢者施設等における津波緊急避難設備・装置の提案を一般募集した。全国から様々な個人、団体、企業から多数の提案があった。私はアドバイザーの1人として提案を評価する委員会に参加した。提案者の職業、経歴、立場のよって、提案内容の傾向が異なっていて、興味深かった。個人は、できるだけ安く、単純な構造で提案を纏めている。企業は、自社の得意技を活かして、すぐにもつくれそうなモノを提案してきている。高齢者施設の団体からは、入居者の体力、症状に合わせて、きめ細かく提案の細部に拘る。

同じ問題を解決するのに、同じ人のことを考えても、立場によって、取る方法、手段が違ってくるのが当然であろう。この人達が集まって、一緒に議論すれば、きっとすばらしいアイディアが生まれるだろうと直感した。つまり、利用者、介護される側の立場(個人、高齢者自身)、介護者する側の立場(施設の職員、管理者)、メーカの立場(経営者、技術者)が同じベクトルに向かって、人間中心設計のプロセスを踏めば、皆さんが納得するゴールが得られるのであろう。6月に静岡県地震防災センターで提案者一同がポストセッションでプレゼンするので、楽しみである。

人間生活工学製品機能認証が今年度中に開始になります(池本 浩幸氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年5月号 - Vol.83)

HCD-Net認定 人間中心設計専門家の方に知って頂きたい認証制度がスタートすることになり、このコラムを借りて紹介させて頂きます。

「(一社)人間生活工学研究センター(HQL)」が、人間生活工学製品機能認証を今年度中にはじめることになりました。
人間生活工学研究センター(HQL)は、1991年に設立され、これまで人体寸法計測事業や専門情報誌「人間生活工学」の発行をやってきた我々には馴染みの深い団体です。会員企業は23社で私が所属する会社も会員となっています。現在の主な活動は、人間生活工学に関する産学官連携の場づくりで産総研や経済産業省とも連携して国内の科学的・工学的な人にやさしいものづくりの普及と向上に寄与する活動をしています。

人間生活工学製品機能認証とは、その製品が人間に与える効果や影響(=人間生活工学的機能)が科学的に適切な開発プロセスを経ているかどうか、またその機能が適切に記述・表示されているかどうかを審査し、その機能を認証するものであり、製品の作り手と使い手との間のコミュニケーションが適切に行われることを目的としています。実際の認証開始は、2014年4月からを予定しているそうです。現在は会員企業を対象にしたプレ認証が行われています。

製品やサービスをより使いやすく設計したり、改善したりすることは我々の重要な役割の1つですが、実際に使いやすさが改善されたことを客観的に示し顧客の理解を得るのは意外に難しいと感じています。

また、顧客の五感に訴求するような新しい体験価値を創造して顧客にいち早く提供しようと各社がしのぎを削っている中で、顧客の感性に訴求するような製品やサービスになっているかどうかを開発の早い段階で明確にしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

人間生活工学製品機能認証は製品やサービスの訴求点そのものにお墨付きを与えるものではありませんが、それを検証するために企業や団体が行った活動やプロセスが客観的に妥当なものであるか

どうかを証明することができるのではないかと期待しています。

国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」(河野 泉氏)

国際宇宙ステーション日本実験棟 「きぼう」のユーザインタフェースについて話をきく機会があった。「きぼう」の運用は、基本的に地上の運用管制室からサポートされており、船内の操作はすべてラップトップコンピュータで行われている。(このあたり、宇宙戦艦ヤマトのように、巨大な操縦席があるアニメのイメージとは全く違うとのこと)。

宇宙飛行士と管制官はともに、宇宙飛行士のスケジュールを確認し、スケジュール表からその日に予定された実験等の作業手順書にアクセスするソフトウェアを使っており、これが非常に感覚的で使いやすいとのことだった。このプログラムはNASAによって開発され、宇宙飛行士に相当数のレビューを行った結果とのことで、まさにHCDの開発プロセスを踏んでいた。宇宙船の操縦、運用という一見、特殊な業務や環境でも、システムの使いやすさや作業効率を向上させる開発方法は同じなのだと感心した。

英国政府にみるデザイン哲学(坂本 貴史氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年7月号 - Vol.85)

2013年4月に Designs of the Year 2013 を受賞した英国政府のウェブサイト(GOV.UK) は、政府のデジタル戦略を一手に担っているGovernment Digital Service (GDS) という内閣府の組織がある。

GDS はその取り組みから得た教訓を「10のデザイン原則(Design Principles)」として一般公開している。
政府の機関でもあるので、インクルーシブデザインについてはもちろんだが、「ニーズからはじめる」「スモールスタートで反復を繰り返す」「データを使ってデザイン」などが含まれている。

これは LeanUX にある「顧客開発からMVP、学びの検証」にほかならない。

また「ウェブサイトではなく、デジタルサービスを構築する」という一文から見ても、これらの原則は、UXデザインの取り組み全体を指すものとして見ることができる。
最後に追加された項目は「物事をオープンにすること、それが世の中をよくすることにつながる」としている。こうした哲学を政府機関から出されていることに同国のデジタル戦略の真剣さが伺える。

オープンガバメントと言われるようになってからまだ日が浅い印象もあるが、参院選挙で解禁された「ネット選挙」がこうした哲学を生み出す機会につながることを期待する。

お得なサービスは、気軽に使えなくしてあるの?(長崎 正道氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年8月号 - Vol.86)

以前のニュースレターで山崎副理事長も絶賛されていたが、多くの路線が走る首都圏の鉄道にはSUICA(PASMO)が便利である。

私もPASMOを定期券として利用している。平日は通勤のために、週末は勤務地とは別の場所で行われる会合のために。週末は別の鉄道会社が相互乗り入れ運転する駅まで定期券利用区間を超えて乗車することになるのだが、PASMOにチャージしておけば、特別な手続きもなく、そのまま下車駅の自動改札を通ることができる。

ここまでは全く普通の話なのだが、私が週末だけ利用する鉄道会社には、10回分の金額で14回乗れる休日回数券なるものが存在することがわかり、このお得な

サービスを使わない手は無い、と考えた。
ところが、この方法にはちょっとした問題が発生する。

PASMO利用を前提とした自動改札機では回数券の併用が判断できないのだ。改札を出るたびに、有人窓口で駅員さんに処理してもらわなければならず、これが実に面倒臭い。時間もかかる。事情をすぐに理解できない駅員さんにもしばしば遭遇する。

PASMOも休日回数券もとても便利でお得なサービスなのだが、その二つを同時に利用しようとした途端に不便なサービスになってしまう。このような使い方を想定していないのか?それともお得なサービスは不便でも我慢しなさい、ということなのだろうか?

ICカード全国相互利用サービス(永田 司氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年9月号 - Vol.87)

先日所用で大阪にでかけた。目的地の駅名をスマホで確認して地下鉄の改札に向かう。休日で券売機の周りは混雑していたが、春から始まった「ICカード全国相互利用サービス」を活用し、そのままいつも使っているICカードで改札を通る。

そこで、はて、どのホームだっけ?と戸惑ってしまった。不慣れな土地で、「○○

方面」だけの表示ではどちらのホームから乗れば目的地に行けるのか、わからなかったのである。

従来、慣れない路線では、切符を購入する際に券売機の上に掲示してある路線図を見て、値段とともに行先や乗継、駅の数を確認していた。それがスマホなどの検索アプリが普及するにつれ事前の確認が当たり前となり、ICカードの登場で切符を購入する機会もずいぶん減ってしまった。だが現場のリアルな情報として路線図や行先表示に助けられる場面は多い。券売機を利用しない乗客が増えていく中で、駅の情報設計や動線はどう変わってきているのだろうか?

ネットもキャッシュレスもとてもうれしいサービスだけれど、その周辺で発生するユーザーの新しい行動を見落としていないか、ユーザーを置いてきぼりにして

いないかを考えさせられた休日だった。

成功体験とイノベーション(渡辺 英範氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年10月号 - Vol.88)

紙媒体やインターネットを介し「変化に適応しろ」、「自らを変化させろ」、「変化に取り残されるな」と言われています。あたかも新しい考え方のように聞こえてますが、これらのことは私が新入社員の頃には既に言われていました。なぜ、新しい考え方のように聞こえてくるのでしょうか。私は同じ言葉であっても、時代によってその言葉の背景が大きく異なっているため、違った言葉に聞こえてくるのではないかと考えています。本質を「先取りした商品開発」、「既存手法ではイノベーションは起こせない」であると考えれば、意味はどの時代でも同じであると考えます。ところが、多くの企業は以前の成功体験から抜け出せず、既存のやり方で商品開発を続けます。何か新しいことにチャレンジしようとしても、なかなか前に進めることができない(許されない)会員の方も多いと思います(私もその中の一人です)。HCDに注目する企業、個人が広がっています。純粋によいものを創りたい、イノベーションを起こしたいなど、それぞれ目的は異なるのでしょうが、企業内でたった一人(ボトムアップ)でHCDを推進してきた私にとっては、本当に嬉しいことです。

アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)は「狂気(Insanity):同じことを繰り返し行い、違う結果を予測すること(doing the same thing over and over again and expecting different results)」という言葉を残しています。

これは「一度失敗したら振り返って考えて、なぜ失敗したか分析し、新しい方法を探さなければならない。新しい取り組み方を考えよう。」と解説されています。Insanityという言葉を使っているところが興味深いです。優れた手法もすぐに古くなります。成功事例もすぐに過去のものとなります。私たちはこれらを忘れずに、常に学び、新手法を開発していかなければなりません。

人間中心設計専門家・人間中心設計スペシャリストを受験しよう!(羽山 祥樹氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年11月号 - Vol.89)

人間中心設計専門家の受験募集が 12月20日(金)からはじまります。今回より「人間中心設計スペシャリスト」という名称で、実務経験「2年」以上の実務者

にむけた、新しい制度が追加されます。

「人間中心設計専門家」と、追加された「人間中心設計スペシャリスト」の、明確なちがいは「想定する受験者」です。「何がちがうの? 自分はどちらを受験すればいいの?」というご質問を、多くいただきました。この場をかりて、ご紹介します。

■「人間中心設計専門家」の想定受験者

人間中心設計専門家は、HCDを主業務とする方や、研究者、組織へ普及をするマネジメントの方を想定しています。共通するのは、ユーザビリティテストやインタビューの技術に加え、HCDのプロジェクト全体をマネジメントできることです。受験条件は、実務経験「5年」以上となっています。

職種なら例えば、ユーザビリティエンジニア、HCDコンサルタント、ユーザーリサーチャー、UXデザイナー、インフォメーションアーキテクトなど。企業内で自社製品へのユーザー調査を担当される方、UX部門のリーダー、HCDの教育者、研究者も、該当します。

■「人間中心設計スペシャリスト」の想定受験者

人間中心設計スペシャリストは、HCDが主業務ではないけれど、日々の業務でHCDを活用されている方を、想定しています。例えば、デザイナーやエンジニアで業務にHCDを取り入れている、というような方です。

また、HCDが主業務でも、経験が浅く、HCDのプロジェクト全体をマネジメントするのは難しいという方も、対象者に含めています。人間中心設計スペシャリスト

は実務経験「2年」以上となります。

以上、「人間中心設計専門家」と「人間中心設計スペシャリスト」のちがいを、かんたんにご紹介しました。ご受験のさいには、ぜひご参考ください。

プロジェクトマネジメントとUX(伊東 昌子氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年11月号 - Vol.89)

プロジェクトマネジメント研究の国際学会であるPromac2013がベトナムのハノイで開催され、発表参加をしてきました。環太平洋地域の国が主催国であり、今年はベトナムでした。毎年、日本の大企業のトップマネジメントの方のキーノートスピーチがあります。今年は、日立製作所のアジア地域プレシデントである方がキーノートスピーチをなさいました。私はその内容を聴いて感激しました。

日立製作所は世界各国でプロジェクトを進めているが、日本品質にこだわりをもっており、その実現を支えるプロジェクトマネジャーのスキルとして、技術システムを支えるハード面のスキルと人間活動を理解するソフト面のスキルが必要と説明されていました。そのソフト面のスキルの重要なものとして、日立製作所のEXアプローチが紹介されました。それはユーザの経験(エクスペリエンス)を理解した上で、複数専門領域の共創としてシステムを提供するというアプローチです。プロジェクトマネジメント学会でこの用語が紹介されたことに驚くと同時に、多くのプロジェクトマネジャーがUXやHCDに興味を持ってくれるような扉を開いて下さったと思いました。今年は、春にNTTのR&DフォーラムでもNTTのプレシデントがスピーチでUXが必要との紹介をされました。もちろん、内容を充実させるのはこれからでしょうが、大企業がシステムの設計・開発の上流、超上流で人間中心設計的な活動が必須であると宣言して下さった記念すべき年かなと思います。これから実践を充実させていかなくてはいけないので、HCD専門家の腕の見せ所になりますね。

モバイル時代のプロトタイピング(脇阪 善則氏)

(HCD-Net ニュースレター 2013年12月号 - Vol.90)

HCDのエッセンスのひとつにプロトタイピングがあります。これは、実装レベルのデザインに入る前のプロトタイプによる検証のことで、このプロトタイプは、紙に手書きで書いたワイヤフレームから、製品レベルに近いモックアップまでレベル感はさまざまです。

5年前には、プロトタイピングとはソフトウェアやハードウェアのモックアップを作ってUIやユーザビリティを検証することを指していました。しかしスマートフォンが登場してからは、さまざまなWebサービスをモバイル端末でいつでもどこでも利用するようになり、ユーザーの利用状況が変化し てきました。これに伴い、プロトタイピングも、UIやユーザビリティの検証だけでなく、ユーザー体験そのものを検証する必要性が高まってきています。

モバイルUXについて書かれた書籍「モバイルフロンティア」によると、従来のモックアップを使ったUIやユーザビリティのプロトタイピングのことを戦術的プロトタイピング、アクティングアウトなどによってサービスシナリオを再現し、その妥当性を検証することを戦略的プロトタイピングというそうです。モバイルが中心の時代に入り、ユーザーの利用状況はどんどん多様化してきています。こうした背景により、今後ますます戦略的プロトタイピングの必要性は広まっていくでしょう。


HCD-Netで人間中心設計を学ぶ

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、日本で唯一のHCDに特化した団体です。HCDに関する様々な知識や方法を適切に提供し、多くの人々が便利に快適に暮らせる社会づくりに貢献することを目指します。

HCDに関する教育活動として、講演会、セミナー、ワークショップの開催、 HCDやユーザビリティの学習に適した教科書・参考書の刊行などを行っています。