海外カンファレンス報告

米ASIS&Tが主催し、国際的な情報アーキテクチャ(IA)に関しての団体であるIA Instituteが運営する、IAに関しての国際会議IAサミットが、4/22〜26にかけて開催された。

 

2015 IA Summit

http://www.iasummit.org/events/ias2015

 

IAサミットは、主にウェブデザインの領域の上流工程を担うIAに関しての国際会議であり、今年で15回目の開催となる。もともとは、その名前の通りの情報設計、および私がHCD-Netセミナーでもたびたびテーマにしている「理解のデザイン」をテーマと掲げてきていたIAのコミュニティであるが、主に米国にて企業のウェブ担当者がUX担当者と呼ばれ始めたことに呼応して、数年前からはUXデザイナーの集まりとしての会としても認識されてきている。

「ハードコアIA」なテーマで興味深かったのは、「意味」の解釈に知覚心理学的観点を盛り込んだモデルの提示と、IAがデザインすべきなのは情報ネットワーク自体であって、ウェブサイトではない、という観点の提示。

前者は、これまでのIA的なとらえ方においての「意味」の解釈が主として言語的であったとして、「言語的」に加えて「知覚的」の二軸で意味の相空間を定義し、表現される情報をそこにマッピングして考えるというもの。

 

What We Mean by Meaning: New Structural Properties of IA / Marsha Haverty

http://www.slideshare.net/mjane_h/what-we-mean-by-meaning-new-structural-properties-of-information-architecture-ias15-47485499

 

後者は、英BBCにおいてこれまで番組の管理方針の策定やナビゲーションなどで実績のあるPaul Rissenによるもので、多デバイス環境やIoTの普及を見越したとき、「ウェブサイト」という対象物をデザインしているのは生産的ではなく、情報ネットワーク自体(Webs)をデザインすることにチャンスがあることを指摘した。

 

Designing Webs: IA as a Creative Practice / Paul Rissen

https://speakerdeck.com/r4isstatic/designing-webs-ia-as-a-creative-practice-ia-summit-2015-version

 

後者のプレゼンテーションにも見られたが、「システム思考(Systems Thinking)」という言い方で、対象物だけではなくその生態系(エコシステム)全体をデザインする考え方、ものごとを動的にとらえる視点がここ数年米国のUXデザイン業界では人気があるように見える。

エコシステム視点は日本でもこれまでもあったが、英語圏でのアプローチの力強いところは、それを多少の誤解を恐れず強引にモデル化して、それを用いて具体的な方法論を確立していくところにある。強引なモデル作りは本質的な視点が欠けてしまうところもあるが、ここ数年のシステム思考へのアプローチを見ていると、多少無茶であってもこうやってお互いのモデルを議論し合えるような環境はそれはそれで貴重に思える。

HCD-Netにおいてもこういったプラクティショナルな議論を行う場は必要かもしれない。


HCD-Net で人間中心設計を研究する

HCD-Net(人間中心設計推進機構)は、HCDやユーザビリティに関する学際的な知識を集め、それらを研究する方々への指導的役割を果たすべく活動しています。

HCD-NetにはHCDの研究者も数多く参画し、研究会の開催、機構誌の発行など、専門家による情報交換を活発に行っています。