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KEERというのは、Kansei Engineering & Emotion Researchの略で、
日本感性工学会が隔年に主催している感性工学に関する国際会議
である。今回の会場は、SwedenのLinköping (oにはウムラウトがついて
いてリンショピンと地元の人は発音していた) Universityで開催された。
参加者は147名で、うち半数が日本人、それから台湾、次いで地元の
Swedenが多かった。初日はワークショップ、あとの大会では毎日
Plenaryがあり、学会は4トラックパラレルであった。Linköpingという町は
StockholmとMalmöの中間あたりに位置しており、特に観光的に見るべき
ものはなく、参加者はまじめに学会に参加せざるを得なかったようだ。
まあ、良いことかもしれない。
僕はまず最初のPlenaryの長町先生の話を聞き、レセプションで「手法の話
になるのかと思ったら、他分野にわたる成功事例の紹介が多かったのです
ね」と言ったところ、「大切なのは手法ではなく、むしろそうした成功事例に
つなげるために、エンジニアなどの関係者を説得するやり方にポイントが
ある」ということだった。「その説得、というか合意形成のプロセスはとても
重要だから、その秘訣をいつかどこかで話してください」とお願いしておいた。
あと、Stanfordで教えている福田先生からは、d-schoolの裏話、つまり他の
既存専攻領域からは浮いた存在であることなどを聞かせていただいた。
発表を聞くと、関連諸領域の学会では既に明らかになっているようなことの
「再発見」のようなものも多く、一般論として、知的財産が集積されるにつれて、
こうしたことは増えてゆくのだろうな、という所感をもった。ともかくKansei
(欧米人はカンサイと発音する)というキーワードが徐々に普及しつつあり、
彼らの発表のなかでも一度はそれがでてくるようになった点は、関係諸氏の
努力の賜物といえるだろう。
黒須 正明、
HCD-Net理事長、 放送大学