セミナー・サロン

10/31(土)にHCD-Net東海支部主催のオンラインセミナーとして『価値観の変化を的確に捉える「海外UXリサーチの価値と効果」』を開催しました。

講師にはアメリカ・サンディエゴで活躍するUXリサーチャーでありUXPRESS代表の井出健太郎氏をお迎えし、「より多くの日本企業が外国人カスタマーに刺さるプロダクト/サービスを生み出す」ためのお話をしていただきました。


はじめに、人口の減少に伴う日本の国内市場の縮小を背景に、多くの日本企業が海外市場に活路を見出している現状をご説明いただきました。

しかしながら、日本企業は高い技術力を持っているにも関わらず海外のカスタマーやユーザーに「刺さる」ものが少ないと仰られておりました。

その理由は「開発上流段階から海外のカスタマー及びユーザーを念頭にものづくりを行われていないこと」や、「外国人カスタマー及びユーザーについて、日本人ユーザーと近いレベルまで理解できていないこと」であり、UXリサーチ(定性調査)の重要性を改めて認識しました。

そして、それらの現状について認識し、実行することができれば高い技術力を活かして「刺さる」プロダクト/サービスを生み出すことができるとのことでした。

次に、米国の人口や人種といった基本データや習慣、価値観の違いをご説明いただきました。

印象的であったのは商習慣の違いであり、野菜など生鮮品や結婚式のプレゼント含むほぼ全ての商品が返品可能であるとのことでした。

また、自動車免許は最短2日で取得することも可能であり、効率主義の米国の価値観を反映している制度といえます。

また、日本よりも新型コロナウイルス感染拡大の影響を格段に受けている米国では、在宅ワークの割合も増す中でも仲間との雑談の機会を意識的に得るためにテレプレゼンスロボットの導入も盛んであるとのことでした。

そして、デジタル文化に最も必要な要素は「顧客中心」であるという考えが浸透しており、「共感」や「思いやり」の重要性が増していると考えられます。

日本企業が海外での定性調査の機会が少ない理由として、マネジメント層によるUXリサーチの軽視、リサーチに時間を割けないことなどが挙げられており、解決策としてはマネジメント層に対してROIの提示を行い重要性を理解してもらうことやアジャイルUXリサーチによって「軽く、速く、安く」実施することが有効であるとのことでした。

よって、海外カスタマーやユーザーに「刺さる」ものを提供するためには、とにかくリサーチの回数を増やして「慣れ」と「気づき」の機会を増やすことが極めて大切であるとのことでした。


今回、講義の前に100名を超える参加者とのZoom機能によるコミュニケーションを行い、UXデザインの実務者を中心に幅広い業種や職種の方にご参加いただいたことがわかりました。また、「海外での調査や評価を実施したことはないが、これから実施したいと思っている」方が全体の5割以上を占めていることから、海外での調査の必要性は認識しているものの、参考情報が少なく実行に映せていない方に多くご参加いただいたと推察できます。

海外に出向いてリサーチを行うことは企業にとって負担の大きいように感じますが、お話しにもあった通り日本と米国の間の価値観だけを見ても実際に日本から離れて現地で暮らしてみないと想像もつかないような違いが数多く存在するため、日本人の感覚とのギャップを理解しないまま海外展開を行うのは非常にリスクが大きいことであると理解できました。

さらに国内の人口減少も相まって外国人を対象としたUXリサーチは今後の日本の企業活動にとってより重要な位置づけになっていくのではないかと考えます。

Zoomのチャット欄及びQ&A欄には多くの気づきや質疑をご投稿いただき、盛況のまま無事にセミナーを終えることができました。

セミナー後のアンケートからは「実用的な方法や事例がたくさん聴けた」「ROIの話が役に立ちそう」という声が多く聞かれました。

HCD-Net東海支部では、参加者から頂戴したアンケート結果を参考にしながら新しいイベントを企画し、今後もHCDやUXデザイン及びサービスデザインの学びの場を提供して参ります。

概要

現在、アメリカではCEOレベルがUX・CXを他社との差別化の要因と認識している企業が約70%も存在したり、CXO(Chief Experience Officer)を設置している企業も3割近くあり、B2CやB2B問わずUXへの期待値が高くなってきています。

また、コロナ禍によって世界の状況・価値観は大きく変わっています。日本でも新型コロナによってテレワークが拡大し、オンラインによるコミュニケーションが急速に進み、人々の価値観も大きく変わっていきました。さて、世界はどのように変わったでしょうか?
アメリカでは元々リモート文化が存在する中さらにデジタル化が進んでいます。このように状況で自分たちや日本の価値観のまま製品開発してしまっていたは海外で受け入れられる製品やサービスは開発できません。
その面でも、海外でのUXリサーチの必要性が増してきています。

本セミナーではアメリカ・サンディエゴで活躍するUXリサーチャーの井出健太郎氏をお迎えして、現在コロナ禍において海外(主にアメリカ)での状況や価値観はどう変わったのかを紹介いただきながら、製品開発前に海外ユーザーの価値観を捉えるUXリサーチをすることの価値やその効果・ROI(費用対効果)について紹介していただきたいと思います。

海外でのコロナによる価値観の変化に興味のある方、特に海外のユーザー調査を検討中の方や実施したいと考えているけどなかなか実行に移せていない方、上司が海外ユーザー調査の必要性を理解してくれないという方にオススメな内容になっています。

■日時
2020年10月31日(土)10:00〜12:00(入室開始9:45)

■会場:オンライン(Zoomによるウェビナー機能を使用します)
※URLは申し込み時に登録したメールアドレスに事前にお送りします。

■定員:120名(先着順)

■主催:HCD-Net東海支部

■参加費:正会員・賛助会員・一般:1,000円

講師

UXPRESS 代表 井出 健太郎氏     https://uxpress.org/

■ご略歴:
米国Sony Electronics IncにてUX Team Leadなど約7年間務める。現在までに手掛けたグローバルUX関連のプロジェクトは15ヶ国200件以上、リサーチした米国ユーザーは1,000人を超える。2015年1月に独立し、カリフォルニア州サンディエゴでUXPRESSを設立。設立後5年間でサイボウズ・日立・トヨタ・リコー・ソニーなど既に30社以上の実績。手掛ける業界はIT、自動車、伝統工芸から有機農業まで広く、スタートアップや中小企業から、日本を代表する大企業まで数多くの日系企業の海外進出をサポートしている。人間中心設計専門家 (HCD-Net)。米国国土安全保障省認定Webアクセシビリティ評価者(Department of Homeland Security Trusted Tester for Web)


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