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HCD-Netフォーラム2020:
ニューノーマル ~誰も取り残さない未来へ~
開催レポート1日目【11月27日(金)】
11月27、28日の2日間のHCD-Netフォーラムは、今年度は初のオンラインでの開催となり、例年に比べ、若干、参加者数は減ったものの、200名以上の方が参加しました。
今年はデジタル化を中心として働き方や生活の仕方に大きな変化があった年ですが、その新しい生活様式でも誰もが取り残されず暮らせるようになるにはどうしたらよいか、HCDを通して自分たちのあり方を考える貴重な機会となりました。
■11月27日 開会式・オープニングセッション「これからの“ニューノーマル”なHCDフォーラム」 ----------
HCD-Netの篠原稔和理事長の司会によるオープニングパネルでは、本年度の新フォーラム委員を中心としたHCDにまつわるトークセッションを実施し、自身の経歴やHCDへの考え方、並びに今後の展望をざっくばらんに語り合いました。
デザイン・マーケティング・コンサルタント・ITエンジニアなどさまざまな業界出身から本年度の委員は構成されましたが、各委員の視線の先は一致して、“人間中心”でした。「玉ねぎの皮をむく」ように自らの本質を追求すると、人間中心設計を通して人間の幸福を追求したいという願いが無意識のうちに委員それぞれにあったのではないでしょうか。
■登壇者
篠原 稔和(理事長/ソシオメディア株式会社)
フォーラム実行委員 7名(敬称略、五十音順)
在家 加奈子(富士通デザイン株式会社)
入江 眞(株式会社野村総合研究所)
黒田 健悟(アクセンチュア株式会社)
黒田 由加(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
島 威一郎(株式会社シグマクシス)
田村 浩二(株式会社シグマクシス)
藤井 勉(株式会社日立インフォメーションエンジニアリング)
■進行
飯塚 重善(理事/フォーラム実行委員長/神奈川大学、横浜市立大学)
■11月27日 基調講演 ----------
※ それぞれの基調講演においては、グラフィックレコーディングを導入しました。
※ 常葉大学 造形学部 安武伸朗教授のご協力を賜り、常葉大学の卒業生(小野寺夏海氏、濱西冴月氏)によって、レコーディングが実施されました。
※ 以下に貼付されているグラフィックレコーディング画像は、ダウンロードしていただいて構いませんが、表示された条件の範囲内での利用が可能です。
※ グラフィックレコーディング画像をダウンロードする場合、通常の、画像を右クリックして「名前を付けて画像を保存」を選択しておこなってください(文言はブラウザによって違います)。
熊平 美香氏『VUCA時代を楽しく生きるために - 多様性に化学反応を起こすマインドセット』
昨今はVUCAの時代 (Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字)と呼ばれ、テクノロジーやビジネスなどの変化が著しく、正確に未来を予想することが困難な状況となりました。そこで本基調講演では教育という観点から、これからの時代に対応する方法を頂きました。
人間の能力である「OS21」(https://learning-21.org/)をアップデートするために、リフレクション(内省)と対話を重ねることによって自律型の人材になることと、個人で学ぶに重ねて自律型の学習組織を作ることの2点が重要であると論じられました。21世紀の変化の時代にも対応し、自分から他者をリードできる人材を日本から輩出しようという熊平氏の想いが込められていた講演でした。
<グラフィックレコーディング>
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
関口 昌幸氏『サーキュラーエコノミーplusと横浜型ニューノーマル』 ----------
横浜市で市民参加型のオープイノベーションに取り組まれている関口氏からは、「テクノロジーとデータで東京から自立する横浜市」という目標のもとに、複数の事例をお話しいただきました。横浜型リビングラボでは、地域の課題を無償のボランティアや行政に委ねるのではなく、地域に生業をもつ企業とビジネスモデルを生み出すことを重視しているということでした。地域コミュニティの担い手をどう見つけるのかという質問に対しては、高齢化の進む竹山団地の事例をあげて、病院とつながりをもち、医療系大学生のキャリア形成の一環で若者の参加も促しているとのことでした。市民中心設計と称されていたように、まさに人間中心設計の街づくりについて学ぶことができる講演でした。
<グラフィックレコーディング>
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
平野 隆氏『ワークスタイルとワークプレイスの新しい関係』 ----------
富士通の「Work Life Shift」は、現在出社率が25%上限と決められ、今後は、業務の目的にあわせて自由にワーク環境を選択できるようしていくとのことでした。2020年7月に発足したデザインセンターは、富士通のデザイン経営をリードし、DX企業への変革のためにあらゆる企業活動にデザインをとりいれ、富士通グループ社員全員にデザインマインドを浸透させる役割を担っていくそうです。HAB-YUなどの共創プロジェクトを実施してきた経験を踏まえ、今後のデザイナーの働き方、ワークプレイスの在り方を再考しているところとのことですが、今後はリアルとデジタルを織り交ぜた形へ進化させていくとのことでした。
<グラフィックレコーディング>
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
藤井 保文氏 『Inclusivity and SDGs』 ----------
これからの社会は、リアルの延長上もしくは付加的な要素としてのデジタルということではなく、リアルとデジタル/オフラインとオンラインはUXという切り口で融合されていくということを、中国のデジタル化の波を事例にとりながら日本の展望を考察し、示唆いただきました。
あらゆる個人の行動データが超膨大に且つ超高頻度に収集されるというのが今という時代。元々オフラインだったものがすべてオンライン化デジタル化され、データが個人と紐付き、“わたし”という人間がどういう行動履歴かということが溜まっていく。リアルの延長ではなく、デジタルでいつでも繋がっていくことで、デジタルが全ての起点になる。
これまでの企業単位のプロセスをも横断するような体験価値の提供にシフトしていく流れの中で、不便なものを便利にするということだけではなく、より自分らしかったりより個人の欲する体験を実現させるデータの使い方こそがアフターデジタルの時代ではないかと問いを投げかけていただきました。
<グラフィックレコーディング>
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
■11月27日 特別セッション:人間中心デザイン基礎知識体系の提案 - 日本における“デザイン”の拡がりへの対応 - ----------
HCD-Net 認定センター 人間中心デザイン基礎知識認定制度検討WGによって、デザイン思考、UXデザイン、サービスデザイン、デザイン経営、利用時品質といった分野の基礎となるHCDの理念、基本的なプロセスなどの知識を得るための基礎知識体系(人間中心デザイン基礎知識体系)を構築されました。この成果は「HCD(Human Centered Design)の考え方と基礎知識体系~Society5.0・デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の人間中心デザイン~」報告書として公開され、今後は、この基礎知識体系にもとづいた研修や、資格認定制度を実施する準備を進めていくとのことです。
本セッションでは、白澤洋一氏によって、「HCD(Human Centered Design)の考え方と基礎知識体系~Society5.0・デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の人間中心デザイン~」報告書が紹介されました。
■11月27日 学術奨励賞 表彰式 ----------
【学術奨励賞】
人間中心設計手法の評価の試み ―カスタマジャーニーマップとペルソナシナリオ法を対象として―
関西大学 喜多千草氏、株式会社SNK 早川葵氏
■11月27日 HCD-Net AWARD2020表彰式 ----------
【優秀賞】 ①
こどもOSランゲージを活用した子どものハザード予測手法の開発
子どもの行動特性とアフォーダンスを活用した安全・安心設計のためのハザードチェックリスト
こどもOS研究会
大阪府産業デザインセンター 川本 誓文、北中 英紀
積水ハウス(株) 河崎 由美子、後藤 浩一
(株)ジャクエツ 阿品 智子
コクヨ (株) 香山 恒
NPO法人GIS総合研究所 谷口 彰
生活空間研究所 中村 孝之
神戸芸術工科大学 曽和 具之
【優秀賞】②
HCDプロセスによる行政サービス改善と組織導入支援
ライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service 」
株式会社コンセント
小橋 真哉、小山田 那由他、石井 真奈、齊藤 美咲
【優秀賞】③
サービス提供価値をベースにしたブランド開発 NEC I:Delight(アイディライト)
ブランド開発へのHCDの組み込み
NEC マーケティング戦略本部
岩田 直子、加賀美 努、石川 貴章、QUAH SAESOON
※受賞作に関するより詳細な情報および最終審査ノミネート作につきましては、HCD-Net AWARD 2020 受賞作品をご覧ください。
■11月27日 交流会 ----------
11月27日の全プログラム終了後、登壇された講師の方々とフォーラム参加者、グラレコのご担当者、運営委員にてオンライン交流会が開かれました。
Zoomのブレイクアウトルール機能を使って、5,6人ずつのグループに分かれて行われたこの会では、物理的な近さとは違う、興味やインサイトによってお互いの近さを感じられるニューノーマルらしい交流会となり、意見交換やコミュニケーションが活発に行われました。
最後にブレイクアウトルームから戻られた際には、皆さん、笑顔で、“時間が少ない~”との声が多数挙がっており、とても楽しい時間であったことが伺えました。
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【レポート作成】 HCD-Netフォーラム2020実行委員 ※五十音順
在家 加奈子、飯塚 重善、井登 友一、入江 眞、加賀美 裕子、黒田 健悟、黒田 由加、河野 泉、佐藤 公一、篠原 稔和、島 威一郎、田村 浩二、藤井 勉、益成 宏樹、山口 恒久
HCD-Netフォーラム2020開催レポート【2日目:11月 28日(土)】へ続きます。