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HCD-Netフォーラム2022:
未来の関係性づくり - ニューネイバーフッド -
開催レポート
12月2、3日の2日間のHCD-Netフォーラムは、機構外への発信、機構外とのコラボレーションを主眼として開催し、広報活動にも力を入れました。多くの人が社会やコミュニティに参画する機会を持つこれからの時代には、より一層の「隣人を知る・理解する力」が必要になってきたと強く感じた2日間だったと思います。
医療現場から仮想空間と様々な領域のゲストをお迎えし、誰も取り残さない未来に向けて一人ひとりが、繋がり、理解し、認め合いながら行動するきっかけとなる貴重な機会となりました。
※ それぞれの講演においては、グラフィックレコーディングを導入しました。
※ 常葉大学 造形学部 安武伸朗教授のご協力を賜り、常葉大学の学生によって、レコーディングが実施されました。
※ 以下に貼付されているグラフィックレコーディング画像は、ダウンロードしていただいて構いませんが、表示された条件の範囲内での利用に限ります。
※ グラフィックレコーディング画像をダウンロードする場合、通常の、画像を右クリックして「名前を付けて画像を保存」を選択しておこなってください(文言はブラウザによって違います)。
●1日目
基調講演① ----------
■登壇者
宮田芳郎氏(ファストドクター株式会社)
■テーマ
『人間性と合理性を止揚する医療DXの取組み』
■レポート内容
HCD-Net フォーラム2022の基調講演として、ファストドクター株式会社の宮田芳郎氏に「人間性と合理性を止揚する医療DXの取組み」と題して同社の取組みをご紹介いただきました。
同社は、医療需給バランスが変わっていく日本の中で、テクノロジーを駆使した医療/介護の生産性革新を課題と挙げ、夜間・休日の救急往診やオンライン診療を軸に急成長しています。医療における人間性と合理性という相反しがちな価値を同社は「FAST(速さ/早さ)」という価値で巧みに両立させています。
同社にとっての“ニューネイバーフッド“は2つあります。ひとつは外部に提供するものとして「全国の医療リソースを滑らかにする事」であり、事業が産み出す社会インパクトそのもの。もう一つは、同社に内在する「異職種コラボレーション」です。
この2つのニューネイバーフッドの間にはフィードバックと学習の速さがあり同社の急成長を支えています。そこにはHCDのマインドセットとプロセスが組織レベルで高度に実践されるカルチャーがありました。同社の今後の成長から引き続き目が離せません。
オープニングセッション ----------
■登壇者
・篠原稔和(HCD-Net理事長/ソシオメディア株式会社)
フォーラム実行委員(五十音順)
・菅井千尋(ソニーグループ株式会社)
・助松裕一(株式会社セールスフォース・ジャパン)
・徳田彩(ネットイヤーグループ株式会社)
HCD-Net広報社会化事業部長
・飯塚重善(神奈川大学)
■レポート内容
オープニングにふさわしく、篠原理事長と新たに今回、実行委員になったメンバーとの対談形式で、フォーラム2022のテーマ「未来の関係性づくり - ニューネイバーフッド -」に込められた想いや聴きどころを語っていただきました。予測できない変化、大きな変化のある環境の中で、自分たちが見るべきは人間だけでなく、広義の「ネイバーフッド」ではないかというところに端を発したテーマ設定になっています。UXデザイナー、エクスペリエンスアーキテクト、エクスペリエンスデザイナーという異なる専門性や社会・仕事における役割を担い、課題に向き合う中で、自分たちが向き合うべきネイバーフッドとは・・・という新しい視点を投げかける、熱いセッションになりました。
基調講演② ----------
■登壇者
バーチャル美少女ねむ氏(VTuber)
■テーマ
『メタバースに生きる新人類との付き合い方』
■レポート内容
バーチャル美少女ねむ氏のプレゼンテーションは、Zoom越しに2次元での視聴者体験になってはいましたが、メタバースならではの要素がふんだんに取り入れられた没入感の濃い基調講演となりました。メタバースの持つ可能性とメリットをふんだんに利用しているねむ氏のプレゼン手法(視聴者との距離感、全身を使った表現など)について視聴者も多くの学びを得ているようでした。
メタバース住人1,200名を対象とした大規模調査の統計結果や質疑応答と通して、我々が隣人として共にワクワクする未来を作っていくための意識変容や”分人主義”のような新しい考え方に触れる密度の濃い新隣人と交流の時間となりました。
交流会 ----------
1日目のプログラム終了後、フォーラム参加者でオンライン交流会を開催。今年もオンライン交流会となりましたが、最近HCD-Netで導入したoViceというバーチャルコミュニケーションツールを使い、会場内にテーブルを設けて1テーブル4、5人で会話を楽しみました。1日目の基調講演についての感想を話したり、業務でHCDを実践するにあたっての悩みを相談したり、さまざまなコミュニケーションが活発に行われました。
2日目も会場での開催になりましたし、次回は対面での交流会が開催できるといいですね!
●2日目
企画セッション① 株式会社パウワウ ----------
■登壇者
・石村 雅賜氏(株式会社パウワウ 代表取締役 事業デザイナー)
・篠原 稔和氏(NPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事長)
■テーマ
『事業開発の現場における「デザイン領域」や「デザイン人材の役割」の変化 デザイン人材の「スキル」「マインド」「哲学・価値観」「養育環境」について篠原理事長との対話を通して今後の方向性を探る』
■レポート内容
つよい事業を作るために、デザイン領域がプロダクトからビジネス、そして高度な体験価値を生むエコシステム・時間を長期的に捉える持続可能性のための原則と拡張してきた。不確実性の高い事業領域において解像度が高い体験価値、精度の高い仮説を作り、検証していく必要がある。そして、そのためにはスキルセット・マインドセットそして哲学が重要になってくるが、その領域拡大においてHCDが活きる、テコになるというお話をいただきました。篠原理事長の『人間中心設計におけるマネジメント』を引用しながら、HCDの意義や人材の進化について、HCDに携わる私たちにとって大変心強いメッセージをいただきました。
企画セッション② デジタル庁 ----------
■登壇者
・大橋 正司氏(デジタル庁サービスデザインユニット・デザインプログラムマネージャー)
・神園 千鶴氏(デジタル庁サービスデザインユニット・デザイナー)
■テーマ
『やさしいサービスをすばやく届けるデザインシステムの取り組み・デジタル庁におけるサービスデザインの普及に向けた取り組み』
■レポート内容
デジタル庁が発足して1年がたち、「誰ひとり取り残されないためのサービスデザインの推進」そしてそれを実現するための調達の取り組みや、「やさしいサービスをすばやく届ける、デザインシステムの取り組み」について、組織やサービスデザインユニットで働く皆さんのバックグラウンドや関り方なども織り交ぜながらお話いただきました。
QAでは企業でデザインシステムに関わる方からの質問があったが、それだけでなく、近しい取り組みをしながら、近しい課題などを持っているからこその質問やうなづきがあった、参加者の共感が感じられるセッションになりました。
デザインシステムだけでなく、ご講演のなかで触れていただいたウェブアクセシビリティガイドブックもデジタル庁のサイトにて既に公開されています。
(https://www.digital.go.jp/)
企画セッション③ HITOTOWA INC. ----------
■登壇者
荒 昌史氏(HITOTOWA INC. 代表取締役)
■テーマ
『ネイバーフッドデザインとは何か』
■レポート内容
ネイバーフッドデザインとは、「ハード面だけではなく、人々のつながりをつくる」ことが大事であるという、社会で取り残さないようなコミュニティの作り方について、事例を踏まえてお話し頂きました。HCDではモノ作りの文脈で話すシーンが多いですが、一緒に協業する人たちや、作ったモノを社会に実装する観点でもとても視野の広がる機会になったのではないかと思います。主体性のデザインは活動が目的にならないように、お互いが寄り添い、主体を持ち寄ることが大事だとありましたが、この考え方はどのシーンでも応用できると思います。HCDを企業で導入していく段階でも、自分と違う業種では参画しづらいなど「居場所がない」と感じてしまうようなことも、近しいのかと感じました。人を巻き込むのが難しいという質問でも、ハブとなるコミュニケーションをするといった示唆もあり、様々なシーンでリフレームできるセッションになったのではないかと思います。
スペシャルセッション 晃華学園 ----------
■登壇者
晃華学園中学校高等学校
長岡 仰太朗氏、佐藤 駿介氏(社会科教員)(当日会場にてご登壇)
SDGirls(中3有志、映像コン最優秀賞チーム「おにおんず」、バナナペーパー普及活動、チョーク再生プロジェクト「starter」)(当日は事前録画されたプレゼンテーション動画にてご発表いただいた)
■テーマ
『グローバルから「ローカルへ」、啓発から「行動」へ』
■レポート内容
2017年からSDGsをテーマにしたアクティブ・ラーニング型授業を導入しており、2018年から実施されている「KOKA×SDGs国際映像コンテスト」の様子と共に、グローバルから「ローカル」へ、啓発から「行動」へつなげるSDGirlsによる活動(中3有志、映像コン最優秀賞チーム「おにおんず」、バナナペーパー普及活動、チョーク再生プロジェクト「starter」)を学生さまによって制作された動画にてご紹介頂きました。問題定義から仮説検証まで自ら主体となって活動されている様子をご報告いただきました。会場からは学生さまの非常に精力的で高度な活動に対し賞賛のコメントが多数寄せられていました。