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Day1 2024/08/24
「デザイン的思考法と価値探索のためのデザイン・リサーチ概論
(2024年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day1)」開催レポート
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この連続セミナーはコロナ禍の影響で2020年度〜2022年度はフルオンラインで実施し、昨年度は1回目のみ対面開催(東京開催)で実施しました。7年目となる本年は1回目に加えて最終の6回目も対面開催とし、2回目〜5回目はオンライン(Zoom)で開催しました。
第1回目は8月24日に、会場にインフォバーン(東京オフィス)をお借りして対面形式で開催しました。
午前中はHCD-Net教育事業部の花田さんからオープニングの後に、運営メンバーと参加者が自己紹介を行いました。
続いて、メイン講師の井登さんによる「連続セミナーのプログラム全体像の説明」とデザインレクチャー「エクスペリエンスデザイン概論 良質なUXデザインって一体なんなんだ?」が行われました。「顧客にとって本当に価値となる顧客経験」について身近な具体例を交えながら解説していただきました。
午後は、参加者が事前に作成した「自分史」を使って自己紹介を行いました。これまでの経歴の話や、遠くから来られている方も多くご当地のお話など、どのグループも大変盛り上がっていました。
続いて井登さんからリサーチ手法レクチャー「発見と創造のためのリサーチ手法概論 価値探索のための調査手法」が行われた後に、6つグループが10分ごとのリレー形式で「デプスインタビュー模擬演習」を行いました。
本年度のワークショップのメインテーマは「顧客のクオリティ・オブ・ライフ向上を実現・支援し、日々の生活における充足感を得ることができる製品・サービス・ソリューション」です。これを軸に講義の内容を参考にしながら各グループがインタビュー設計を行い、これを全グループで組み合わせ、インタビューの流れを完成させました。そして各グループが担当する部分を決め、グループ内でインタビュー中の役割分担をしました。
これをもとにインタビューとその記録を行い、初日は終了しました。
セミナー後は懇親会が開かれ、他のグループの参加者との交流も多く行われていました。
参加者はデザイン以外のバックグラウンドを持つ方も多く、学び始めたばかりの方・勉強中の方・さらに知識を深めたい方など、さまざまな目的を持たれていました。
グループは当日に発表され、はじめは緊張の姿が見られましたが時間と共に会話も増え、ランチへ一緒に行くなど、積極的に交流を深められている姿が見られました。
これから約2ヶ月間、通常のお仕事に加えて学ばれることは大変かと思いますが、人間中心デザイン(HCD)/UXデザイン(UXD)を体系的に演習形式で学んだ経験が今後のご活躍の一助になりますよう応援しています。
Day2 2024/09/08
「デプスインタビューを用いた価値探索〜価値抽出
(2023年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day2)」開催レポート
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9月2日に開催された第2回目のUXデザイン連続セミナーは、オンライン形式で行われました。
今回は、各グループが他のグループから2名ずつ調査協力者として招いて30分間のインタビューを行い、KA法を用いて価値抽出する、という演習を行いました。
前半は、Slackに事前に投稿された質疑への応答が行われ、続いて講師の井登さんから「デプスインタビュー」と「質問設計」のレクチャーが行われました。「インタビュー中は協力者の発言を解釈せずにそのままの状態で留めておく」などこの後の演習に向けたアドバイスがありました。
グループごとにインタビュー設計を行いました。対面開催だったDay1で築いた信頼関係をもとに、活発に意見交換を行う様子が見られました。
インタビュー時間は30分間と短いため、質問の優先順位を明確にすることや、デスクリサーチを組み合わせるなど工夫がなされていました。
インタビューの実施では、1人目のインタビューを終えると短時間で振り返りと2人目でより焦点を当てて深掘る事柄を決めます。設計段階から丁寧に共通認識をつくったことでスムーズに話がまとまっているように見られました。
また、Day1でのインタビューよりも話題の切り替えが自然になっていることや、深掘りの角度が多様になっているなど、得た知識をすぐに実践されており素晴らしいと思いました。
後半はインタビューの内容から「ファクトイド抽出」とKA法を用いた「価値カードの作成」を行いました。
はじめに井登さんからKA法のご説明をいただいた後、各グループで作業を行いました。
KA法を初めて行う参加者も多く、はじめは手が進みづらい様子が見えました。しかしチューターから「同じ価値が生まれてしまうことに躊躇せず、他の価値に言葉を揃える必要もない」というアドバイスもあり、最後には用意したシートにたくさんの価値が書き込まれていました。
今回終わらなかった作業は次回までの宿題となりました。
セミナー後はオンラインで懇親会が行われました。セミナーを通しての相談に始まり、お仕事の話など時間いっぱいに話が膨らみました。
今回から前年度に引き続き、参加者は講義内容に関する動画を事前に視聴してから参加することでグループワークの時間を多く取る工夫をしています。また、今回から宿題があり、次回までに各グループで日程を決めて作業をすることになります。
Day3 2024/09/28
「価値の構造化とペルソナデザイン
(2023年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day3)」開催レポート
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9月28日に開催された第3回目のUXデザイン連続セミナーは、オンライン形式で行われ、「統合価値マップ」と「ペルソナ」の作成を行いました。
はじめに講師の井登さんへ質疑応答が行われました。Day2の開催後に各グループが宿題を行うために自主的に集まって作業をされていましたが、その際に出た質問は随時、井登さんやチューターが対応しており、その質疑についてより深く解説する時間となりました。
前半では「統合価値マップ」を作成するため、インタビューから得たファクトイドを価値に変換し、グルーピングを行いました。はじめに井登さんから統合価値マップのご説明をいただいた後、各グループで作業を行いました。
価値変換の際には、チューターから「具体的にしすぎるとその人らしさが消えてしまうため、特徴的な部分を残すことを意識する」というアドバイスが行われました。
その後、画像のように近しい価値同士を集め「価値統合マップ」を完成させました。グルーピングが難しい価値は1つ1つ議論しながら決めるなど、慎重に作業をしている様子が見られました。
後半は「価値統合マップ」をもとに「ペルソナ」を作成しました。抽象的な価値を誰でもわかりやすい文章に落とし込むことは正解がなく、多くの参加者が難しさを感じている様子が見られました。
チューターから、「ペルソナにその人らしさを持たせるために『嫌なこと』や『したくないこと』を取り入れる」というアドバイスが行われました。ペルソナがポジティブな行動や価値観だけで構成されると現実感を失って共感しづらいため、ネガティブな側面もバランスよく反映させることが重要です。
最後に各グループが「どのような価値が浮かび上がったか?」「解決が必要そうな、達成・実現されるとインパクトがありそうな価値の方向性とは何か?」「どのようなペルソナが浮かび上がったか?」について発表を行いました。
続いて井登さんから発表のフィードバックを受け、これをもとにペルソナを完成させることが次回までの宿題となりました。
セミナー後はオンラインで懇親会が開催されました。画像は乾杯の様子です。
オンラインだからこそできる懇親会として短時間でブレイクアウトルームのメンバーをシャッフルすることで、多くの交流ができる場にしました。セミナーを通しての質問や仕事の相談など、少人数だからこそできる深い話ができたと思います。
全6回にわたるセミナーの中盤に差し掛かりました。正解がなくモヤモヤする場面も多いと思いますが、ゴールを意識することや、グループでの意見交換がこれまで以上に重要になると思います。
Day4 2024/10/12
「ユーザー体験の俯瞰的な可視化によるアイデア発想手法」
(2024年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day4)」開催レポート
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10月12日に開催された第4回目のUXデザイン連続セミナーは、オンライン形式で行われ、「サービスコンセプト」と「サービスジャーニーマップ」の作成を行いました。
はじめに、講師の井登さんへの質疑応答が行われました。今回は実務で実践する方法や他部署との共有の方法が話題に上がり、参加者が学んだことを実務に活かそうとする姿勢が伺えました。
前半は井登さんから「サービスコンセプト」の説明が行われ、「これから『決める』作業が多くなりますが、ペルソナに対しての想いを大切に取り組んでほしい」とのお話がありました。
続いて、各グループに分かれて演習を行われました。
この演習では「私たち自身が何を成し遂げたいのか」を明確に持つことが、デザインに深みを与えます。そのため、全員が自分の意見を持ち、それを共有し合うチームワークがより求められました。
後半のはじめは、井登さんから「サービスジャーニーマップ」の説明が行われました。
続いて、再び各グループに分かれて演習を行われました。
参加者はペルソナの「どのような日の、何をしている時にフォーカスを当てるのか」を決めることに苦戦している様子が見えました。井登さんからは「全体を書き出して広く見た上で、『この範囲に取り組まないと意味がないよね』と思うところを探し、また広く見ることを繰り返しましょう」とアドバイスがありました。
参加者からは「このペルソナならこうするに違いない!」といった発言が多く見られ、ペルソナを丁寧に作ったからこそ可能な感情移入が行われていました。
最後に質疑応答が行われ、サービスジャーニーマップを完成させることが今回の宿題となりました。
セミナー後はオンラインで懇親会が行われました。3〜4人に分かれたブレイクアウトルームをランダムで3回シャッフルし、多くの人と交流することができました。
「決める」ことが増える段階では、意見を言いやすい雰囲気が重要なプロセスに含まれると考えます。限られた時間内で演習を行うことに焦りが出ることもあると思いますが、さまざまな視点を取り入れたアイデアが出せるよう、引き続き応援しています。
Day5 2024/10/28
「キーモーメントの策定から具体化とアイデアの拡張発想とプロトタイピング手法」
(2024年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day5)」開催レポート
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10月28日に開催された第5回目のUXデザイン連続セミナーは、オンライン形式で行われ、「サービスジャーニーのブラッシュアップ」、「解決のためのアイデアづくり」、「キーモーメントの策定」、「プロトタイピング対象の明確化と定義」を行いました。
前半は、Slackに事前に投稿された質疑に対する応答が行われ、続いて講師の井登さんから演習がありました。
その後、グループごとに「サービスジャーニーのブラッシュアップ」と「解決のためのアイデアづくり」を行いました。
参加者は作り上げたサービスジャーニーマップの中からどこにクローズアップするかに悩む姿が多く見られました。井登さんからは、「すべてのペインを解消することが最善ではなく、時にはフラットな部分や落ち込む部分があっても良い。次のステップに進む手助けを行い、回復や成長の喜びを提供することで、より良い体験が生まれる」とのアドバイスがあり、その後、参加者は広い視野で考える様子が見られました。
後半は「キーモーメントの策定」と「プロトタイピング対象の明確化と定義」を行いました。
はじめに井登さんから最終回の発表のご説明をいただき、その後各グループで作業を行いました。
参加者は今まで決めてきたこと振り返りながら、プロダクトの機能などについて慎重に話し合う様子が見られました。また、グループ内で職種や得意なことを共有することで、実現可能なプロトタイプや最終回での発表方法を明確にしていきました。
最後に井登さんから「最終発表に向けて行き詰まる場面が多いと思いますが、ひとまず最後まで突っ走ってしまいましょう」「決めてきたものに囚われすぎず、大事なところだけを忘れずに、自由度を持って進めてほしい」とのお話がありました。
セミナー後はオンラインで懇親会が行われ、グループを超えた参加者同士の交流が深まりました。
次回は最終回です。参加者の皆さんが熱心に取り組まれてきた成果であるプロダクトが見られることを楽しみにしています。
Day6 2024/11/9
「プロトタイピングによるエバリュエーション手法」
(2024年HCD-Net UXデザイン連続セミナー Day6)」開催レポート
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UXデザイン連続セミナーの最終回となる第6回目は、11月9日に対面形式で開催しました。Day1同様、株式会社インフォバーンの東京オフィスをお借りして実施しました。
今回は、「成果発表〜相互評価」という形で、Day1~Day5までの総決算であるグループワークの成果発表を行いました。発表に対して、講師の井登さんからもFBをいただき、参加者間で感想を述べあいながらお互いの理解を深めました。
午前中は各グループで午後の発表に向けて準備を行いました。発表に向けた最終調整のため、最後まで集中してグループワークに取り組まれている様子でした。
午後からは、各グループ毎に成果発表を行いました。Day1からDay5までに検討してきた「どんなペルソナのどんな課題を解決するか」「課題を解決するためにどんなサービスを提供するか」「サービスコンセプトやジャーニーマップはどのように設計したか」等を発表しました。
今回は2019年に名古屋で開催した以来の対面形式による発表となり、アクティングアウトを披露するグループも見られました。
その他、昨年度からの変化として生成AIによるイメージ作成を発表に用いられているグループが多く、生成AIの活用が浸透していることを感じました。
発表後には、全6日間の内容を通して浮かんだ疑問を井登さんが回答したり、参加者同士が対話する時間がありました。
その内容の一つに、「変化の激しい今の時代に、デザイナーとして何を学ぶべきか?」という話がありました。このような時代の中で、考えるプロセスに時間をかけた後で形にすることも一つの手段ではあるが、まずつくって形にしてみることで、つくっている内に考えを浮かばせる進め方も有効であることから、「形にする」「具体化する」ことを得意とするデザイナーの役割はますます重要になる。そのため、つくるための方法論のバリエーションを学ぶことは大事なことの一つであるというお話が印象的でした。
最後に参加者全員からコメントをいただき、本セミナーの全プログラムは終了となりました。
「他の会社の方と一緒にワークする機会が貴重だった」「実践を通してUXデザインの理解が深まった」「ペルソナを設定することの重要性を再認識できた」といった声を多くいただくことができました。
セミナー後は懇親会が行われました。他のグループワークでの進め方や苦労したことを共有するなど、グループを超えた参加者同士の交流が深まりました。
2018年から始まった本セミナーですが、今年度も参加者の皆さまの熱意や頑張りに支えられ無事に終了することができました。講師・運営メンバー共に大変感謝しております。ありがとうございました。
今後、本セミナーの参加者の皆さまが学んだことを現場で役立てられることを期待します。